短大教授は和菓子職人 二つの顔で教え子導く 内定率は100%

西日本新聞 ふくおか都市圏版 日高 三朗

 茶道家がほれ込む腕利きの和菓子職人と、200人以上の若者を社会に送り出してきた短大教授。福岡市博多区の長末光正さん(65)には二つの顔がある。“仏の心”を持つ生粋の博多っ子は、さまざまな事情を抱えた若者に道を開き続けている。

 「授業をあと3回休んだら卒業できないよ。親が出した200万円がパーだよ」。出席日数がぎりぎりの学生にささやく。「次の授業に来たらクリスマスケーキが食べられるぞ」。若い子の興味を引き、ドロップアウトを未然に防ぐ。

 現職は昭和初め創業の和菓子店「ばんぎや」経営者、そして純真短大(同市南区)食物栄養科の客員教授だ。教授歴13年。菓子職人の技術と化学知識を教え、時には人脈を生かして四年制大学からしか採用していなかった菓子メーカーに教え子を売り込んだ。母子家庭だった大分県出身の教え子には、自社ビルの1室を半額の家賃で貸した。就職が決まったのに家探しに難渋する姿を見かねたのだ。

 学生の主な就職先である病院や保育園では、食材の吟味やカロリー計算が欠かせない。おやつも食べたい人のために糖分を抑え、アレルギーにも気を配る調理法を教えたのは、「卒業後の選択肢が増える」からだ。他の教員とも連携し就職内定率は100%という。

 実家は博多の老舗菓子店だった。それでいて父は税理士、本人も東京の私大を出て大手ガラスメーカーに就職した。しかし祖父の病で店を継ぐ。35年前のことだ。博多帯の献上柄をあしらった和菓子「博多献上」作りに熱中した。上品な味わいは表千家の宗匠が出版した本に銘菓として紹介された。

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 博多祇園山笠の取締まで務めた経験を生かして、博多駅商店連合会の飾り山笠建設委員長もやった。博多にわかを愛し語り口は優しく軽妙だ。駅のイベントではテレビ局のマイクに答えた。

 生来の学問好き。国の職業訓練指導員(パン・菓子科)の制度ができると、県菓子工業組合の要請で資格を取得した。精華女子高(博多区)の特別非常勤講師も短大と同時期に始め、製菓衛生師の資格取得のためのカリキュラムを作製。すぐに成果は現れ、今春まで9年連続で合格者を出し、合格率は100%に迫る。熟練技能者の博多マイスターや日本食品衛生協会の手洗いマイスターにもなった。「学生が手洗いマイスターの資格を取れれば就活にも生きるはず」。旅立ちの春。次のアイデアを練っている。 (日高三朗)

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