感染症と世界 危機の克服に力の結集を

西日本新聞 オピニオン面

 新型コロナウイルス感染症の大流行は世界にとって「第2次大戦以来」とも形容されるほどの厳しい試練である。

 ウイルス封じ込めのため、多くの国が国境封鎖や入国制限に踏み切り、他国との壁を高くしている。そもそも一国だけで対処できる問題ではないはずだ。目に見えないこの新たな脅威を克服するため、国際社会は協調の価値を再確認し、力を結集しなければならない。

 国連のグテレス事務総長は3月末、社会・経済面の影響を最小限にするために国際社会の結束した対応を呼び掛ける報告書を発表した。

 だが各国とも国内対応に追われ余裕を失っている。その典型が欧州連合(EU)である。

 死者数の多いイタリアは医療物資の提供を他の加盟国に求めたが、ドイツやフランスはマスクなどの輸出禁止や国家管理を打ち出し、十分な支援を得られなかった。EU首脳会議でも財政支援策がまとまらなかった。

 EUの統合は域内の「移動の自由」を理念に掲げ「壮大な歴史的実験」と注目されてきた。それが今、この非常事態に足並みが乱れている。当面、厳しい国境管理はやむを得ないとしても、国際協調の旗振り役という立場は見失わないでほしい。

 一方、国際協調の機運に水を差すのが中国と米国だ。感染拡大に絡み米政府高官が中国の初動の遅れを批判すると、中国外務省報道官は米軍が感染症を持ち込んだとの陰謀論を発信し、非難合戦に陥る一幕もあった。

 両国ともに、政府の対応の甘さを批判する自国民の視線をそらす狙いだろうが、互いの神経を逆なでするだけの無用な応酬でしかない。

 日本と韓国の間でも感情的な対立があった。日本が入国制限を強化した際、事前通報の有無で両国の見解が分かれ、韓国は「日本は不透明、消極的な防疫措置により国際社会から不信感をもたれている」と反発し対抗措置を取った。感染拡大の終息のめども立たない中、こうした摩擦に時間を割く暇はない。

 私たちが今後、注視すべきは途上国や紛争地での感染拡大である。グテレス氏は「先進国は直ちに途上国を支援し、保健制度を強化することが必須だ」と訴えた。特にアフリカ大陸が深刻だと警告している。

 衛生状態が悪く医療体制も脆弱(ぜいじゃく)な地域は実態把握が難しいため、いったん爆発的感染が起これば被害は甚大だ。新たな紛争や難民流出にもつながりかねない。世界的流行の長期化を防ぐためにも、途上国支援に向けて国際社会が協調を図り、具体的な行動に踏み出すことが喫緊の課題である。

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