地下水脈改善で「大地の再生」目指す 北九州市で体験型講座

西日本新聞 北九州版 白波 宏野

 土壌を改良することで自然環境を保全し、災害を減らす取り組みを全国で行っている北九州市門司区出身の造園技師、矢野智徳さん(63)が小倉南区の斜面地にある民家で体験型の講座を開いた。豪雨などによる斜面地の災害は近年多発している。造園業者や主婦ら13人が参加し、地下の水脈や空気の流れに着目し、「大地の再生」を目指す矢野さんの説明に聞き入っていた。

 矢野さんは門司区白野江で生まれ育ち、一般社団法人「大地の再生 結の杜(もり)づくり」(山梨県)の顧問として、全国の山地や工場用地などで土壌改善のための施工を実施、講演も行っている。

 講座を開いた民家は、小倉南区の塔ケ峯(標高582メートル)の裾野にある。民家の裏山では近年、雨が降ると地滑りが起き、庭の木の葉が変色するなどしているという。

 矢野さんは講座の冒頭、住宅や道路などのコンクリート構造物が地下の水脈や空気の流れを妨げることが、洪水や土砂崩れなどの自然災害につながると指摘。「自然の不具合を抑え込むという発想ではなく、自然の回復力を補うことで根本的な環境改善を目指すべきだ」と訴えた。

 民家は木造だが、前庭や道路、家屋周辺の側溝はコンクリートなどで舗装されている。矢野さんは「地中に浸透していくはずの雨水が、地表をさらって泥水となり、地中の空気の通り道をふさぐ悪循環が続いている」と語る。

 矢野さんはまず、側溝の底や庭を覆う厚さ5センチほどのコンクリートの端に直径10センチほどの穴を1~2メートル間隔で空けるよう指示した。穴から地中に雨や空気が入ることで、土壌が柔らかくなり、空気や水の通り道ができるのだという。

 地下水脈の流れを改善するため、民家周辺や畑の土を掘り起こし、「風の剪定(せんてい)」と呼ばれる草刈りもした。風でたなびく草の上部だけを刈り取って風通しを良くし、根の呼吸を促すという。作業は2日間で進められた。

 周辺の地下水脈は近くの井手浦川に出て、紫川に流れ込むという。矢野さんは「多発する自然災害など『自然の無言の反発』に向き合う必要がある。ミクロ(民家一帯)の環境改善で自然の回復を促すことにより、周辺の流域全体が変わる」と強調した。

 初めて参加した佐賀県の造園業徳島良平さん(40)は「空気や風を観察するという矢野さんの視点は植物を扱う職人として本質的なものを感じた」と話した。 (白波宏野)

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