診療報酬改定 医師の働き方も改めねば

西日本新聞 オピニオン面

 医療サービスの「公定価格」である診療報酬が今月から改定された。改定は原則2年ごとに行われる。今回の大きな柱は、勤務医の長時間労働を是正する働き方改革の推進である。

 「患者のために」「医療水準を維持するために」-。多くの勤務医がそんな思いで過酷な長時間勤務に耐えている。新型コロナウイルス感染が拡大している地域の勤務状況は、さらに厳しさを増しているはずだ。

 高齢化が加速することで医療ニーズは今後さらに高まる。医療の質を維持し、感染症拡大のような不測の事態にも十分対応できる医療を構築するため、今回の改定を契機とし、働き方改革を急ぐ必要がある。

 昨春施行された働き方改革関連法により、時間外労働(残業)を原則年360時間以内にする上限規制が設けられた。ただし医師への適用は、2024年4月まで猶予されている。

 その適用後も、厚生労働省が昨年示した上限規制は極めて緩い。基本は年960時間で、地域医療で特定機能を担う医療機関では当面年1860時間まで認められる。地域の医療を維持するためとはいえ、甘い規制だと言えるだろう。

 今回の診療報酬改定では、電子カルテの入力といった医師の事務作業の補助職員を配置した場合の加算制度が拡充された。要件を満たし救急医療を担っている病院の入院料に5200円を上乗せする。この増収分を医師の採用や労働環境の改善に充ててもらう目的だ。

 現状の過酷な労働状況を変えるには物足りないが、該当する医療機関はこの改定を着実に長時間労働の解消につなげる努力をすべきだ。実際にどの程度、目的に沿う効果があったのか、国は定期的に検証してほしい。

 救命救急機能のある病院では多くの医師の残業が年1860時間を超えるとみられる。今すぐ対策を始めなければ、24年導入の上限規制など、絵に描いた餅になりかねない。

 今回改定では在宅医療の推進や医療機関の規模に応じた役割分担の強化など、近年の改定内容に沿う見直しも行われた。

 それでも、少子高齢化と人口減少に対応した地域医療の再編は遅々として進んでいない。都市部への医師偏在や、全体としての小児科・産科医の不足も解消を急ぐべき課題だ。だが全国一律に実施される診療報酬改定だけで、こうした難題を乗り越えるには無理があろう。

 地方にも適切で十分な医療サービスを提供できる体制が欠かせない。都道府県とも連携を深め、地域の実情と社会構造の変化に対応できる医療の再構築を国には求めたい。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ