お互い尊くて、かけがえのないもの【坊さんのナムい話・9】

西日本新聞 くらし面

 ご存じでしょうか。8日はお釈迦(しゃか)様の誕生日です。私たち仏教徒は「花まつり」と呼んでお祝いします。イエス様の誕生日であるクリスマスに比べ、なんと知名度の低いことか。

 教員時代、キリスト教と仏教を比べるため、高校生にそれぞれのイメージを色に例えてもらいました。するとキリスト教の色は「白」「黄色」「光の色」「七色」。明るく爽やかなイメージです。一方で仏教はというと「茶色」「黒」「どどめ色」だそうです。どどめ色ってどんな色かと聞くと「知らないけど、そんな感じ」。広辞苑には「桑の実の色。暗褐色」。これらの色が悪いわけではありませんが、いかに仏教のイメージが地味で暗いかがよく分かります。とほほ。

 さて、お釈迦様は約2500年前、現在のネパールに生まれました。誕生の様子はいくつかの伝説に残されています。代表的なものに、生まれてすぐ「天上天下唯我独尊」と宣言したというのがあります。聞いたことありませんか。

 この言葉、そのままの意味は「天の上にも天の下にも我一人尊い」です。「この世界で私一人が尊い」なんて、とても自己中心的に聞こえますが、そういう意味ではありません。私一人の視点ではなく、複数の視点で捉えると本当の意味が見えてきます。すなわち「我一人」を複数で考えてみる。そうすると我は「我々」、一人は「一人一人」。つなげると「我々一人一人が尊い」。つまり、お互いが同じように尊くかけがえのない存在である、ということです。お釈迦様は、それぞれの命の尊さと平等性を宣言したのです。

 仏教では、この世界に単独で存在するものはなく、お互いが影響し合っていると説きます。「私だけが」という考え方がないのです。この伝説は創作かもしれません。しかし個人主義の中で自己責任ばかりを問いがちな私たちに、大切なことを投げ掛けています。私が大切であるのと同じように、私以外の誰かも大切ということです。

 どうですか。ちっとも暗くないでしょう。仏教は明るく温かいもの。それを感じるためにも、近くのお寺の「花まつり」に参加してみてください。(永明寺住職・松崎智海 北九州市)

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