「今から三十数年前の話ですが…

西日本新聞 オピニオン面

「今から三十数年前の話ですが、私の中学生時代、数学の先生はたばこを吸いながら授業してたんですよ」。講演でこう語るのは核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲さんだ。ICANは国連での核兵器禁止条約採択を主導した功績でノーベル平和賞を受賞した団体である

▼川崎さんは続ける。「今では考えられないですよね。つまり、せいぜい30年ぐらいで世の中の規範は大きく変わる、ということなんです」

▼この4月から改正健康増進法が全面施行され、公共施設だけでなく飲食店、職場などでの原則禁煙が一層強化された。教師が教室で喫煙するなど「今は昔」である

▼一方、川崎さんが力を注ぐ核兵器廃絶に目を向ければ、世界では「核による抑止」という古い常識がいまだに幅を利かせている。核兵器の開発や使用を禁じる条約ができたにもかかわらず核大国は核抑止の論理にしがみつき、核戦力の増強に走る有様だ

▼「しかし、社会はより良い方向へと変わってきた。私の子や孫から『どうしておじいさんの時代には、人類が破滅するような核兵器を喜んで造ってたの』と言われるようになるはず」

▼禁煙が当たり前になったように、世界が「核兵器禁止」を常識と思う日が来るか。考えてみれば婦人参政権も米国の奴隷制廃止も、新たな常識となるまでは大変な苦労があった。しかし、今はそれに異を唱える人はいない。

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