「こども宅食」取り組みに注目 新型コロナ拡大…戸別配達の強み

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、生活の苦しい子育て世帯に食品を無料で届ける「こども宅食」の取り組みが注目されている。大人数の集まりや密閉空間の活動への注意呼びかけに伴って、子ども食堂の自粛が目立つ一方、戸別配達の強みで「宅食」は継続できているようだ。見守りや聞き取りといった新たな支援も始まっている。九州の2団体を訪ねた。

 袋入りの米や、みそが入った容器がいくつも並んでいた。宮崎県三股町の町社会福祉協議会の事務所。宅食により提供する品々で、社協職員の松崎亮さん(39)が「みそは、食育の支援団体が手作りしたものですよ」と教えてくれた。

 町内では、生計が厳しく18歳以下の子どもがいる家庭に食品を届ける「みまたん宅食どうぞ便」が始まっている。町社協と社会福祉法人、ボランティアが共同で運営し、米、野菜、みそなどを配達。多くは農家などから譲り受けたものという。スマホやパソコンで登録した家庭に毎月1回、10食分を届け、利用者とは無料通信アプリLINE(ライン)でやりとりする。

 こども宅食はもともと、東京都文京区と民間団体が2017年、区に集まったふるさと納税を財源に、ラインで利用者を募る形で始まった。「どうぞ便」はこれをモデルに18年4月にスタート。利用者は45世帯と、開始当初の約3倍に増えた。必ず対面で品を渡し、生活相談にも応じている。

 新型コロナの感染が広がってからも、食品を届けるボランティアの衛生管理を徹底して活動を続ける。学校の休校が始まった3月上旬は、給食センターから譲り受けた野菜を配った。感染拡大による暮らしへの影響も聞き取りしている。

 そんな中、ある家族から申し込みがあった。子ども2人がいるひとり親世帯。自粛ムードで親の飲食店の客が減り、行き詰まっていた。町社協職員の内窪弘子さん(64)は「所持金がほぼなく、よく生活できていたな、という状態でした」と振り返る。

 松崎さんは、宅食の利点を「感染症が流行しても、利用者とつながっていられる点」と感じている。「やりとりをすると、必要なのが親の就労支援か、子どもの学習支援か、課題が分かってくる。そこから、その家庭に合った個別対応につなげる。宅食はあくまで入り口なんです」

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 もう一つ、訪れたのは佐賀市の市民団体「スマイルキッズ」。昨年6月から月1回、ひとり親家庭に1戸3千円分の食品を配送している。こちらも、親に直接会って提供。利用は今年3月、スタート時の2倍以上の32世帯に増えた。

 宅食を全国に広げようと発足した一般社団法人「こども宅食応援団」(佐賀市)の助成金などで運営。生活保護、児童扶養手当、就学援助といった公的支援を受ける世帯に、宅食の活動を市が紹介したこともあって利用が増えた。

 宅食はこれまで中止せず続け、学校の休校を機にこれとは別の支援も始めた。子どもだけで留守番をする利用者宅に、スタッフが菓子を配って回り、様子を見る「見守り支援」。宅食を利用する家にラインで希望を募ると、10世帯ほどが手を挙げた。

 「応援団」スタッフで、スマイルキッズの見守りを手伝う井内美奈子さん(48)は「親が仕事中に一番心配なのは、『子どもだけで家にいて大丈夫かな』ということなんです」。

 1世帯に週2、3回訪れ、玄関先で子どもと会う。昼なのに寝間着だったり、昼食がインスタント食品だけだったり、留守時の様子はさまざま。訪問後は親にラインで報告する。夏休みなど長い休みの時期もできないか検討している。

 宅食利用者の状況はどこも切迫しているという。部屋の床が見えないほど物が散らかった家、抱き上げると驚くほど体重が軽い幼児、「水道やガスが止められるのが怖い。眠れない」と相談を寄せる親。それでも行政の介入は拒み、支援につながらない例が多い。

 福島めぐみ代表(47)は「食品を届ける時に相手と接するから、少しずつ関係性ができて家庭の状況が見えるようになる。訪問型の支援はここが強み。もっと普及に力を入れたい」と語る。 (編集委員・河野賢治)

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