「息子の死、無駄にしたくない」届いた夫婦の願い 事故現場に標識

西日本新聞 社会面 笠原 和香子

 「息子の死を無駄にしたくない。願いがかないました」。大分県日田市の国道沿いに、事故防止を目的とした新たな標識が設置された。2年前に起きた交通事故で息子を亡くした福岡市西区の高木久志さん(56)と博子さん(57)夫婦が手紙で日田署に働き掛け、県警側がその思いをくみ、実現した。特命取材班に声を寄せた夫婦は「これが事故防止の一助になれば」と願っている。

 2018年6月の雨の朝。ミニバイクで通勤中の日田市の会社員高木啓至さん=当時(23)=は、国道210号のカーブで中央線を越えたトラックと衝突し亡くなった。バイク好きで、大学卒業後は会社勤務の傍ら、白バイ隊員を目指して勉強中だった。

 「その日からこの世は生き地獄になりました」。博子さんは事故後を振り返る。事故直前に帰省した啓至さんが残した「また帰ってくるね」という言葉が忘れられず、毎日涙を流しながら帰りを待ち続けた。

 転機は、別の交通事故の遺族に出会った同年秋。家族を失った苦しみを分かち合えたことで少しずつ前を向けるようになった。夫婦は昨年8月、「安全運転を促す標識を立ててほしい」と日田署に手紙を送った。

 九州管区警察局などによると、特に死亡事故が起きた場合は警察と道路管理者が現場を確認し、再発防止策をとる。今回の現場も事故直後、日田署員と国土交通省日田国道維持出張所職員が協議し、路面に凹凸を付け振動で減速を促す「減速ライン」を整備していた。

 手紙が届いたのは、整備から約1年後だったが、署と同出張所は「遺族の強い思いを大事にしたい」と反応。昨年11月、カーブの形を示す線形誘導標6基を立てた。同出張所の矢羽田成巧所長(当時)は「誘導標のように視覚に訴える標識は即効性がある。だがどんなに整備しても、ドライバーの意識が変わらないと事故は減らせない」と語る。

 交通事故で亡くなる人は全国で毎年3千人以上。高木さん夫婦は心から願っている。「事故は被害者の将来や家族の幸せ、全てを奪う。標識に込めた被害者、遺族の思いを忘れないでほしい」 

(笠原和香子)

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