人気映画が描いた未来 岩本誠也

西日本新聞 オピニオン面 岩本 誠也

 映画は時代を映し出す鏡であり、名作は時代を超えて楽しめる。

 タイムマシンで過去や未来を行き来する映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年)を久しぶりに鑑賞してそう実感した。製作から30年以上たつのに古さを感じず、タイムマシンで学生時代に戻った気分になる。

 作品の中に日本製品が数多く出てくるのが、いかにも80年代らしい。当時、「メード・イン・ジャパン」が世界を席巻していた。

 マイケル・J・フォックスさん演じる主役のマーティと相方の発明家ドクがタイムマシンに改造した車「デロリアン」に犬を乗せ実験する場面もそう。デロリアンを操る無線操縦機は双葉電子工業製で、その様子を撮影するハンディーカメラは日本ビクター(現在のJVCケンウッド)製、実験成功を確認する時計は「SEIKO」と「CITIZEN」だった。

 他にも、目覚ましは「Panasonic」、カセットテープ再生機は「AIWA」といった具合。マーティ憧れのピックアップトラックはもちろん「TOYOTA」だ。今ならおそらく中国製品のオンパレードになるのだろう。

 時間を移動するための動力源も興味深い。完成当初の燃料は核物質のプルトニウム。ところが30年前の過去に行く際、帰り用の燃料を持っていくのを忘れてしまう。この先はネタバレになるので、映画で確認してほしい。

 これが続編のパート2(89年)では一変する。30年後の未来から戻ってきたデロリアンには大改造が施され、ごみ箱に入っていたバナナの皮や飲み残しのビール、アルミ缶などを燃料に使い、再び未来へと旅立っていく。バイオマス(生物資源)などの再生可能エネルギーが原子力に取って代わった世界を描いたのだろう。

 30年後の2015年の世界では、スケートボードが宙に浮き、車は空を飛んでいた。映画で描かれたこうした社会はまだ実現していない。

 ただ、トヨタ自動車が空飛ぶ車を開発する米国の企業に出資するなど、空飛ぶ車の開発競争が過熱している。数年後の実用化を目指していて、方向性は一致している。

 再生可能エネルギーの活用も進む。映画から何年遅れるか分からないが、脱原子力もいつか実現するに違いない。

 未来はできるだけ魅力ある社会であってほしい。人工知能(AI)搭載の殺人ロボットが未来からやってくる映画「ターミネーター」(1984年)の世界は体験したくない。 (論説委員)

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