廃校をカフェに…転機は東日本大震災 生ごみ循環へ、みやま市の挑戦

西日本新聞 くらし面 佐藤 弘

 福岡県大木町の資源循環の仕組みに倣い、生ごみ循環を始めた自治体が、同じ南筑後地区にあるみやま市だ。2018年12月から、廃校となった小学校跡地で大木町の約3倍の処理能力を持つ循環施設「市バイオマスセンター・ルフラン」を軸に、台所から食と農、環境をつなぐ取り組みを進めている。

 元は校長室と保健室だった部屋が、カフェに改装されていた。ルフラン開設と同時に設けられ、地元で食に携わる人々が、日替わりで食事や喫茶を提供する憩いの場である。

 隣には生ごみやし尿を処理するプラントがあり、窓越しにバキュームカーや生ごみ回収車が行き交うのが見える。久留米市から来たという女性は「最初はちょっと驚いたけど、においがするわけでもなく、慣れたら全く気になりません」。

 本来は、地元のイチゴ農家がこしらえたジェラートを食べたり、コーヒーを飲んだりできるのだが、新型コロナウイルスの感染拡大で、現在は規模を縮小して営業中。4月は週に1度程度、テークアウト用の弁当販売で在宅ランチのニーズに応えている。

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 みやま市が取り組みに着手したきっかけは、東日本大震災だった。「全国の原発が停止。地域分散型で、地球温暖化防止につながる再生可能エネルギーの模索を、という機運が高まったことが環境政策の転機になった」。市環境課の松尾和久課長(56)は言う。

 小水力、風力、太陽光、木質バイオマス…。12年、新たなエネルギー源を検討する中で浮上したのが、すでに収集体制が整った生ごみやし尿、汚泥などによるメタンガス発電だった。

 また、ミカンやナスなど園芸作物が盛んな同市。食品工場や選果場も多い。そこで出る残りかすや選別くずなど事業系の生ごみも安く引き受ければ、地場産業振興にもつながる。

 市は当時、老朽化したごみ焼却炉の建て替えも検討していた。水分の多い生ごみがなくなれば、新たな焼却炉は小型化でき、運転コストも削減される。ただ、し尿処理施設は当面は稼働できる状態にあり、新たな投資にはクリアすべき課題があった。

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 市は「し尿処理施設を残し、焼却施設を新設」と「生ごみ分別をした上でし尿処理施設を廃止し、循環施設と小ぶりな焼却施設を新設」の2択でコストを試算。その結果、後者の方が初期費用で9・8億円、毎年の運用経費で1・7億円節減でき、雇用も創出(現在の実績45人)。二酸化炭素(CO2)排出量も年間316トンと、それまでの13%に減らせるなど「台所から温暖化防止に寄与できると分かった」(松尾課長)。

 液肥を使う農家には、大木町からもらった液肥で栽培した作物を食べ比べするなどして理解を得た。「肥料代は今までの10分の1以下。できた作物もおいしくて、みやまのためになるなら、協力せにゃいかんと思うた」。液肥で米麦や菜の花を栽培する農家、山田一昭さん(77)は語る。

 市は廃校になった山川南部小跡地を候補地に選定。校舎は研修室やカフェ、食品加工室など、にぎわいの場にする計画を示したが、循環施設には“迷惑施設”のイメージがつきまとう。

 「なぜこの場所か!」。厳しい意見が相次いだ地元説明会。空気を変えたのが西原親市長(当時、故人)の要請で会場を訪れた大木町の前町長、石川潤一さん(67)のマイクだった。

 「思い出が詰まった小学校がなくなる気持ちはよく分かります。私の卒業した中学校も統廃合で今や跡形もなく、寂しい限りです。でも皆さんの場合、循環施設として活用され、校舎も市民に喜ばれる集いの場になるとですよ。気にされるような、においとかはありません。すらごと(うそ)と思うたら、大木町に見に来てください」

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 地元同意を得た市は17年2月から9カ月かけ、環境課職員と地域で環境活動の手助けをする市民エコサポーターで、ルフラン計画の説明会を200カ所で実施。分別の仕組みと目指す方向性を市民と共有した。

 松尾課長は「この事業の優れた点は、人間が生活する以上、絶対に切り離せないものが、ごみとならずに有効に活用されること」と意義を強調する。

 取り組みは大木町からみやま市へ、点と点がつながり、線となった。これを面に広げようと提言する動きが、南筑後地域で始まろうとしている-。

 (佐藤弘)

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