手遅れになる前にSDGsを理解して食や社会問題の未来を考えた行動を

西日本新聞

 「10年、20年前にくらべて科学技術は進歩し、生産性も向上して、経済は年々拡大を続けている。本当ならば、より豊かな、よりゆとりある生活が営めるはずなのに、現実はそうはならない。何かおかしい、と私たちはうすうす感じはじめている」

 この文章を読んで、そうだ、そうだ、と相槌を打った人も多いのではないだろうか。だとすると、問題がある。この文章は、約30年前(1988年)に著者が書いた文章(『共生社会の論理』)からの引用だからだ。

 1988年の日本と言えば、ある種の人々が理想郷のごとく語るバブル経済の真っ只中であった。その裏では、公害問題の深刻化が世界全体に波及して第1の環境ブームが起き、エコロジー運動が展開されていた。しかし、経済的恩恵に浮かれていた人々の大半はこうした問題を他人事としてしか見ていなかった。

 その後、ご存じにようにバブル経済は崩壊し、約10年後にはアジア通貨危機が起こり、その約10年後にはリーマン・ショックが起き、そして、このたび、コロナ・ショックによって、世界は一気に経済的苦境に陥った。そのつど、さまざまな反省をしてきたはずなのに、すぐに忘れ、似たような過ちを繰り返す。しかし、地球全体がそれではもたなくなってきている。

 エコロジーという言葉に代わって「SDGs」という言葉が唱えられるようになってきた。これは、2015年9月の国連総会・サミットにおいて、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されたことをきっかけとする。SDGsは17の大目標(ゴール)と169の小目標(ターゲット)から構成され、世界が一丸となって取り組むべき内容が定められている。

 こうした問題は、つい途上国ほど深刻と考えてしまいがちが、子供の相対的貧困率の高さなど、日本もさまざま危機を抱えた当事者なのだ。だからといって、悲観しているばかりではいけない。

 本書は3部構成で、SDGsの概説からビジョン形成と社会経済システムの変革まで論じられている。食と農業に重きを置いているが、専門に分化しすぎず、相互関係に着目し、世界全体の状況やその動態が述べられている。したがって、いま何が問題で、どうすべきなのか、経緯と展望が理解しやすい1冊となっている。

 

出版社:農文協
書名:食・農・環境とSDGs
著者名:古沢広祐
定価(税込):2,530円
税別価格:2,300円
リンク先:http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54019209/

西日本新聞 読書案内編集部

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