コロナ最前線「防護服足りない」「院内感染怖い」 未知の闘いに緊迫

西日本新聞 一面 斉藤 幸奈 井上 真由美

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言が出される中、医療従事者の疲労や緊張も日に日に高まっている。九州で初めての感染が福岡市で確認されてから1カ月半。先が見通せない「闘い」の最前線にいる人たちは「感染の心配は拭えない」「防護服やマスクが足りない」「地域医療を守れるだろうか」と悲鳴を上げる。

 「直接不安を口にする職員はいないが、未知の感染症に対して、心の中は不安でいっぱいだと思う。医療人としての誇りに支えられて何とかやっている」

 福岡県久留米市の聖マリア病院の本田順一副院長はそう話す。福岡県内に12ある感染症指定医療機関の一つで、受け入れ数は公表していないが6床ある。感染症について十分な知識のある職員が対応している。

 気掛かりなのは、職員の家族にも影響が広がっている点だという。親が医療従事者であるという理由で、子どもが友人から近くに「来るな」と心ない言葉を言われ、傷ついたケースもある。医師や看護師らも医療現場を離れれば、それぞれ家庭人。本田副院長は「不安があれば何でも言って」「防護服を身に着けて安全にしているから大丈夫」と職員に声を掛けている。

 一方、感染のリスクを警戒した患者が受診を控える動きもあり、全体で見ると患者は減っているという。勤務シフトに困る事態は避けられているが、本田副院長は「これが続けば、経営にも影響を与えかねない」と懸念する。

 感染が確認された入院患者を受け入れている福岡県北部の病院の院長は「看護師は付きっきりになるなど対応には通常の4倍ほどの人手がいる。防護服もゴム手袋もどんどん消費している」と話す。感染症の専門医はいないため、内科と呼吸器内科の医師が対応。保健所からは「もっと受け入れてほしい」と要請されるが難しい。「社会的使命だから何とかやっている」

 福岡県では福岡記念病院(福岡市)と新小文字病院(北九州市)でクラスター(感染者集団)が発生したとみられている。院内感染の恐怖はなくならない。

 「防護していても医療従事者や他の患者のリスクはゼロにできない」と語るのは福岡県内の救急病院の院長。発熱で受診後にPCR検査を受け、陽性になった例が複数あるという。発熱した患者向けの入り口を設け、別室で診察に当たるが、無症状の患者もいる。マスクも防護服も在庫が十分とはいえず、「武器を持たずに戦うのと同じで怖い」と吐露する。

 福岡市中央区の病院の副院長は「保健所が多忙でパンクしており、疑わしい患者が地域の病院をたらい回しにされていると感じる。院内感染が各地で起こりかねない」と指摘する。数日前、高熱が続く女性患者についてPCR検査の必要性を保健所に伝えたが、自宅待機となったという。この病院は女性が受診した3カ所目の医療機関だった。

 保健所の人員にも限りがある。副院長は疑わしい症状の人を受け入れる新たな拠点をつくる必要性を強く感じている。「感染の可能性がある人が地域の病院やクリニックに行き、院内感染がいろいろな所で起こると地域医療が立ちゆかなくなる。医療崩壊を防ぐために大事なことだ」と訴えた。 (斉藤幸奈、井上真由美)

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