トランプ氏、失政批判回避に躍起

西日本新聞 総合面 田中 伸幸

決戦の構図(上)

 米大統領選は再選を目指す共和党のトランプ大統領(73)に、民主党のバイデン前副大統領(77)が挑む構図が固まった。既存の政治構造や国際協調の枠組みを破壊することもいとわないトランプ氏か、混乱を修復し以前の秩序を取り戻そうと呼びかけるバイデン氏か。両氏の課題を探る。 (ワシントン田中伸幸)

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 「なぜオバマ(前)大統領は“寝ぼけたジョー”の支持表明をしないのか? それは何かがおかしいと思っているからだ」

 新型コロナウイルスに関する記者会見を連日開くトランプ氏は8日、大統領候補の指名獲得を確実にしたバイデン氏を早速、自ら名付けたあだ名で呼び、大統領候補として「問題あり」とやゆした。前回2016年の大統領選と同様、事実関係はお構いなしに相手候補を徹底的に攻撃し、民主党支持層に不信感を植え付けようとする常とう手段だ。

 大統領就任から3年余。米国第一主義に基づく独善的な政策を、抵抗勢力と戦う構図をつくりながら強行して「公約死守」をアピール。2月にはウクライナ疑惑に絡む弾劾裁判で「無罪」を勝ち取った。その頃には経済も堅調で、白人保守層を中心とする熱烈な支持者は口をそろえた。「11月の大統領選は楽勝だ」

 しかし、コロナの感染拡大とともに、そんな楽観論は影を潜めつつある。

 トランプ氏は感染が深刻化し始めても「ウイルスはすぐに消える」と言い張った。医療現場からは「初動が完全に遅れた」との批判がやまない。1月末に中国からの入国規制措置を早々に打ち出したとの反論も、死者が1万人を超えてさらに増える現状を前に説得力を欠く。

 コロナ禍と戦う「戦時の大統領」として挙国一致を呼びかける傍らで、各地で陣頭指揮を執る民主党系の州知事らと医療機器の配備遅れなどを巡り衝突が絶えない。中国や世界保健機関(WHO)などにも批判の矛先を向けるが「責任逃れ」と報じられ、記者会見では質問者に激高し「三流記者」と言い返す。その表情にはいら立ちがにじむ。

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 感染拡大をいかに食い止めたか、あるいは食い止められなかったか。歴史的な失業者数を記録するなど急激に悪化した経済をどう再生するか。それらが大統領選の最大の争点となるのは間違いない。

 死者数の想定が当初見込みの10万~24万人を下回りそうだとの推計が出た8日、トランプ氏は「とてもいい仕事ができている」と強弁した。治療効果が定かでなく副作用の危険性が指摘される薬剤についても「失うものはないはずだ」と言い放って使用を推奨している。

 「トンネルの先に光が見えてきた」。現状が切迫する中、前向きな発言を繰り返すトランプ氏に「勇気づけられる」と評価する国民は少なくない。だが、3年余りに及ぶ自らの政権運営と言動で深刻化させた米社会の分断を修復するほどの高い評価には至っていない。「戦時の大統領の支持率は上昇する」が米国の定説だが、コロナ禍における支持率は微増にとどまる。

 民主党支持者からは、トランプ氏が再選に向けて好んで使う「最高はこれからだ」との表現をもじって、こんな声が漏れる。「最悪がこれからやってくる」

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