高台から新風が吹く 山浦修

西日本新聞 オピニオン面 山浦 修

 東京・上野から成田空港へ向かう特急電車に乗って約1時間。千葉県佐倉市の京成佐倉駅前には五輪金メダリスト高橋尚子さんをほうふつさせる像。車で少し走ると、右手に長嶋茂雄記念岩名球場、左手には小出義雄記念陸上競技場が近接し、ゆかりのレジェンドをたたえている。印旛沼干拓地をはさんだ同県印西市の丘陵地に夜間照明付きの400メートルトラックが整備され、若者たちが黙々と走っていた。出身は「筑紫女学園高」「長崎南高」。女子ランナーのあいさつが初々しかった。

 所変わって大分県。大分自動車道から東九州自動車道下り線に入ってしばらくすると、視界が広がる。日本の高速道でも有数の眺望とされる別府湾サービスエリア。階段を下りれば海原を借景にした建物群が並ぶ。ハコモノ行政への批判も浴びた平松守彦前大分県知事だが、別府市十文字原に積極的に誘致したこの施設を、一村一品運動とともに取り組んだグローカルの成果と評価する声は多い。施設を利用する半数の3千人は92カ国・地域の外国の若者で、多国籍な空間となっている。

 二つの場所には、共通点がある。どちらも風が吹き抜ける高台。そして大学キャンパスだ。印西市の丘の上にあるのは順天堂大スポーツ健康科学部、別府市の標高300メートル台の「天空」に浮かぶのは立命館アジア太平洋大(APU)。今春、もうひとつの共通点ができた。順天堂大の鯉川なつえ教授と、APUの出口治明学長が、私が担当している大型コラム「提論」の筆者に加わったのだ。

 鯉川さんは、福岡市出身で筑紫女学園高-順天堂大とランナーの道を歩んだ。1995年のユニバーシアード福岡大会にマラソン代表として出場。酷暑の中で熱中症になり、倒れた経験を持つ。その後、同大で陸上競技部女子監督を務める一方、同大系列病院での日本初の「女性アスリート外来」創設に貢献した気鋭のスポーツ科学研究者だ。

 出口さんは、ライフネット生命創業の経験を持つ経済人出身。博識で知られ、経済、歴史、哲学など幅広い分野の著作は40冊を超える。2年前に学長に就き、女性、ダイバーシティー(多様性)、高学歴をキーワードにした国際人材育成や起業に精力的に挑んでいる。「九州の企業に使い倒してほしい」と地域貢献へ意欲満々だ。

 郷里を遠望する鯉川さんと、外からやって来た出口さん。若者たちと格闘するそれぞれの高台から、九州の読者に向けて新風を吹かせてくれる。提論10年目出会いの春である。 (特別論説委員)

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