福岡県で宿泊税 導入には時期が悪過ぎる

西日本新聞 オピニオン面

 宿泊料に上乗せして観光振興策の財源とする宿泊税の徴収が4月から福岡県内で始まった。県と福岡、北九州両政令市の制度である。

 当初の想定とは大きく異なる逆風下のスタートだ。新型コロナウイルスの感染拡大対策で、人の移動が著しく減少し、宿泊業界は未曽有の苦境にある。

 事態収束後の地場経済のV字回復を目指す意味では、観光振興策の準備は必要だろう。しかし今、行政が優先すべきは、厳しい経営環境にあるホテルや旅館などの状況を正確に把握し、必要な支援を急ぐことだ。

 県と両市は宿泊税の4月分の納付期限を1カ月延長したというが、それで十分だろうか。場合によっては制度の見直しも含めて検討すべきである。

 宿泊税は東京都など先行自治体が五つある。福岡県内では、1人1泊当たり福岡市200円(宿泊費2万円以上は500円)、北九州市200円で、うち50円を県税に回す。県は両市以外で200円を徴収する。県と両市は初年度税収をそれぞれ3億~18億円と見込んでいた。

 計画では、県は税収から両市を除く市町村に宿泊客数などに応じて交付金を配分する。加えて観光案内の多言語化や周遊レンタカー代金の補助、ボランティアガイド育成などを図る。

 福岡市は九州の玄関口、拠点としての機能強化に力を入れ、北九州市は工場群など産業施設を生かし、修学旅行の誘致などに取り組む。九州全域への波及効果も期待できよう。

 ただ現状では、絵に描いた餅になるのではないか。博多港、福岡空港とも国際便は利用者がほぼゼロであり、訪日客は期待できない。国内に目を向けても福岡を含む7都府県に緊急事態宣言が出され、旅行だけでなく出張も自粛を迫られている。

 宿泊税を支払うのは利用者だが、営業面のマイナスは否定できない。福岡県旅館ホテル生活衛生同業組合が3月下旬に行った組合員調査では、4月の集客状況について9割が「かなり悪い」と回答した。98%が6月まで「厳しい影響がある」と答えた。自己破産を申請した旅館や休業を検討する施設もあった。

 回答には、宿泊税導入は「時期が悪過ぎる」といった先送りを求める声も多かった。現場の本音だろう。福岡県と両市は、こうした状況を受け止める必要がある。宮城県では新型コロナ感染拡大を受けて、宿泊税の来年度導入を見送っている。

 福岡県内の宿泊税導入を巡っては県と福岡市が対立し、難渋の末に合意した経緯がある。ここは、県と両市で十分な意思疎通と連携を図り、制度のあるべき姿を探る局面だろう。

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