熊本地震から4年 移住きっかけで心身不調に・・・息長いケアの必要性

西日本新聞 くらし面 新西 ましほ

 2016年に起きた熊本地震から間もなく4年。町の復興が進む一方で、心の傷が癒えていない人たちがいる。震災直後から被災者の支援に取り組んできた精神科医で「熊本こころのケアセンター」(熊本市東区)センター長の矢田部裕介さんは、息の長い支援の必要性を訴える。

 地震発生後、最初に被災者の心のケアを担ったのは「災害派遣精神医療チーム」(DPAT)。精神科医や看護師ら3~5人一組で活動する専門家チームで、東日本大震災を機に各自治体で整備が進んだ。熊本地震では半年間にわたって派遣され、被災した病院の患者の転院支援や避難所での心のケアなどにあたった。

 災害や事件、事故などで大きな衝撃を受けると、心的外傷(トラウマ)が生じる。矢田部さんによると、地震後は「トイレのドアを閉められない」「電気とテレビをつけないと眠れない」「地震の夢を見る」「被災した地元に足を踏み入れられない」といった相談が多く寄せられたという。

 この時期、災害関連業務に忙殺される職員の心のケアも重要な役割だ。ある30代の職員は、使命感から土日も休まず働いていたが、住民からは「対応が悪い」と怒りを向けられた。不眠や食欲不振、息苦しさを感じるようになり、相談したという。

 矢田部さんは、現在、保健所などで新型コロナウイルス感染対策に当たっている職員も同じような環境にあると指摘し「住民の理解、職員に対する正当な配慮とリスペクトが必要だ」と強調する。

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 避難所から仮設住宅へ移り生活再建へ歩み出す復興期に入ると、うつや不眠、アルコール依存症、認知症の悪化などさまざまな問題が出てくる。そこで、被災者の中長期的な心のケアを目的として、地震から半年後の10月に開設されたのが「熊本こころのケアセンター」だ。県精神科協会が運営し、精神科医や保健師、臨床心理士らが相談支援に取り組んでおり、今年3月末までに3306件の相談があった。

 生活再建への不安や不自由な生活へのストレスから心身に不調を来すケースだけでなく、相談者がもともと抱えていた発達障害やアルコール依存症などの問題が顕在化する例も多いという。矢田部さんは「仮設住宅に移って家族や近所の人のサポートがなくなったり、逆に見守りが強化されたりしたためではないか」と分析する。

 マンションなどの民間住宅を借り上げる「みなし仮設」の課題も見えてきた。早く入居でき、設置費用も抑えられるが、被災者が分散するためコミュニティーができにくく、被災体験や悩みを共有できず孤立してしまう。ボランティアなどの支援も受けにくい。

 50代の男性は、住み慣れた地域から離れた孤立感から酒量が増え、相談時は「生きている意味がない」と話していたが、被災者の生活支援を担う「地域支え合いセンター」を通じて人とのつながりを取り戻したことで回復したという。

 矢田部さんは、震災から時間がたった今、つらさを抱えていても吐き出しにくくなっている人が少なくないと指摘する。「仮設から災害公営住宅など新たな住まいへ移る時期を迎えており、環境の変化はメンタルヘルスの不調に陥るリスクを高める。継続した支援が大切だ」 

(新西ましほ)

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