国対都、背景に新型コロナ特措法 「知事の大きな裁量」対立生む

西日本新聞 総合面 川口 安子 下村 ゆかり

 東京都と政府が、新型コロナウイルス特措法の緊急事態宣言を受けて店舗や施設への休業要請で綱引きを繰り広げたのは、地方の都道府県知事に大きな権限を与えている特措法自体の「性格」に要因がある。政府内には、有事に準じる事態に対処するには政府(首相)がもっとリーダーシップを取れるよう、法改正を行う必要があるとの声も出ている。

 「権限はもともと、代表取締役社長かなと思っていたら、天の声がいろいろ聞こえまして、中間管理職になったような感じではありますけれど」

 10日午後、記者会見して休業要請の詳細を発表した小池百合子都知事は、自身が行使できる権限をこう表現し、政府による介入を皮肉った。都側は当初、政府の緊急事態宣言から間を置かずして国内初の休業要請に踏み出す方針だったが、経済への影響を懸念する政府が「待った」を掛けた。開始時期や要請対象の業種を巡り、両者がギリギリの調整を行った経緯がある。

 特措法は、対象地域を指定した上で、緊急事態宣言を出すのを首相の権限と定める。外出自粛、休業の要請といった具体的な行動を取る権限については、都道府県知事に委ねている。地方の裁量が大きい仕組みになっているのはなぜか。

 2012年の民主党政権時、前身の新型インフルエンザ等対策特措法が成立した際に担当閣僚だった中川正春元防災担当相は、11年の東日本大震災の教訓が込められていたと話す。「(ウイルスなどの脅威から)国民の命を救うためには、現場である地方に最大限の権限を集中すべきだという考え方だった」

 一方、特措法は政府の大きな役割を「総合調整」とする。中川氏は「つまり、知事が権限を行使しやすい環境を整えること。財政が厳しい自治体も、豊かな東京都と同様のことができるように、政府が財政支援も行うイメージだった」と振り返る。

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 今回、初めて特措法を運用した現政府内には「知事の権限が強すぎて、使い勝手が悪い。それぞれの県がバラバラに走りだすと、まとまって事態に対処できなくなる」(官邸筋)との反応がある。国民の私権制限もできるが、「自由と権利に加えられる制限は、必要最小限のものでなければならない」とくぎを刺す条文があり、限定的との受け止めが大半だ。地方自治で、自民党より急進的な「地域主権」を掲げた民主党政権の名残を特措法に見て取る向きもある。

 地方自治に詳しい片山善博・早稲田大大学院教授は「特措法の担当大臣に経済再生担当相を充てるなど、政府はウイルスの感染拡大阻止より経済優先になっている」と指摘。

 緊急事態宣言が出ている福岡県をはじめとする地方側に対しても、「何でも国に決めてもらおうとするばかりで、当事者意識の欠如が目立つ。地方が権限と財源をセットで持つのが理想だが、国からの財源の手当てを待つことなく、主体的に必要な対策を講じていくべきだ」と求めた。 (川口安子、下村ゆかり)

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