バイデン氏、支持の熱狂高まるか

西日本新聞 総合面 田中 伸幸

決戦の構図(下)

 「好々爺(や)」。米大統領選で野党民主党の候補指名を確実にしたバイデン前副大統領を知る人々が語る人物評だ。「家族を亡くした人がいると聞き、多忙の中すぐに電話して慰めた」といった逸話は数多い。

 20人以上が名乗りを上げた党候補指名争いは抜きんでた存在がおらず、大混戦となった。勝利の決め手となったのは人柄に加えて上院議員時代から40年以上、国政に携わった経験と安定感だ。特に、今も根強い人気を誇るオバマ前大統領を副大統領として支えた評価は高い。予想に反して大苦戦した序盤の苦境を救ったのは、黒人初の大統領をバイデン氏が献身的に支えたことを知る黒人層だった。

 次期大統領は新型コロナウイルス感染拡大で急激に落ち込んだ経済をどう再建するかが問われる。その点、オバマ政権の一員としてリーマン・ショック後の経済再生に取り組んだ実績はバイデン氏の強みとなる。

 9日には外出自粛中の自宅からインターネットを通じて、感染拡大阻止のため検査や治療の無償化が必要だと強調した。「米国は危機をチャンスに変えてきた。全力でやれば何でもできる」。国民に結束を訴える姿にリーダーとしての風格が漂い始めた。

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 民主党の候補として最大の使命はトランプ大統領の再選阻止に尽きる。

 2016年の大統領選では、製造業の低迷にあえぐラストベルト(さびた工業地帯)に位置する東部ペンシルベニア州や中西部の州でトランプ氏が予想外の勝利を収めた。「貿易協定が製造業を破壊した」と主張するトランプ氏に、元は民主党支持だった多くの白人労働者層が希望を託した。

 政権奪還にはラストベルトの諸州での支持回復が不可欠だ。バイデン氏はペンシルベニア出身で、地元の労働者に寄り添えると期待される。実際、中西部ウィスコンシン州での直近の世論調査ではトランプ氏をリード。与党共和党の地元組織は「民主党は間違いなく票を増やす」と警戒する。

 ただ、バイデン氏は自由貿易推進派として知られ、労働者層からの信頼獲得に不安を指摘する声もある。8日に党候補指名争いから撤退したサンダース上院議員を支持する若者らにも自由貿易を問題視する意見があり、トランプ氏は早速「サンダース氏の支持者が私に投票するよう期待している」と揺さぶりをかけた。

 一方でバイデン氏がサンダース氏支持者を意識するあまり急進的な左派政策を積極的に取り入れれば、穏健な政策を望む無党派層などを遠ざける危険もはらむ。彼らは混迷続きのトランプ政権を嫌い、政治に秩序を求めているからだ。

 バイデン氏は77歳と高齢で時に覇気を欠き、失言も多い。副大統領候補に女性の起用を明言するなど支持拡大を図るが、岩盤支持層を誇るトランプ氏をしのぐほど支持者の熱気を高められるか。

 「反トランプ」の有権者からはこんな声も漏れる。「トランプには絶対投票しないが、『いい人だからバイデンに』という気にもなれない」 (ワシントン田中伸幸)

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