「耶馬渓に元気を」 山崩れから2年、水上スキーに打ち込む高校生

西日本新聞 社会面 吉川 文敬

 大分県中津市耶馬渓町で住民6人が犠牲となった大規模山崩れから11日で2年になる。自宅が全壊し、家族4人で避難生活を強いられた高校2年の飛瀬綾音さん(16)は、小学5年から始めた水上スキーを一時は諦めかけた。周囲の人々は、そんな彼女の背中を押した。支援と励ましを受け、国際大会で準優勝を果たした飛瀬さんは「応援してくれるみんながいるから頑張れる」と前を向く。

 2018年4月11日未明。小石が落ちてくる音で目が覚めた。直後「ガッシャーン」。台所の皿が割れる音が響いた。祖母(72)は大量の土砂が流入した台所近くで震えていた。母ひとみさん(47)と3人、着の身着のまま外へ逃げたが、真っ暗で何も見えない。夜が明けると、山が割れたように崩れ、家々が跡形もなくなっていた。それ以降のことはよく覚えていない。

 被災後は、思い悩んだ。同市マリンスポーツクラブの中村大悟コーチ(38)が「声をかけづらかった」と振り返るほど、ふさぎ込んでいた。自宅を失った家族に負担をかけまいと、費用のかかる水上スキーは諦めようと考えていた。

 そんな教え子に中村さんは同年夏、仲間と協力し、20万円以上する用具一式をプレゼントした。「一緒にやろうという精いっぱいの思いを伝えたかった」。ひとみさんは「綾音はあそこから変わった」と話す。

 「みんなの思いを無駄にできない」。週1回だった耶馬渓ダム(同市)での練習に毎日のように通うようになった。競技への姿勢も変化。中村さんと納得するまで議論を重ねた。練習を共にする福岡大水上スキー部の輪に入り、助言ももらった。「積極的な子ではなかったのに」とコーチも舌を巻くほど打ち込んだ。

 以来、実力は急上昇。昨年9月にあった全国大会のU-17(17歳以下)女子個人総合で初優勝、アジア大会でも準優勝した。今夏予定されている全国大会、アジア大会は新型コロナウイルスの影響で開催は不透明だが、ひたすら練習に汗を流す。「思い出したくないことも多いけど、下ばかり向いているのは嫌。自分が活躍することで耶馬渓に元気を届けたい」 (吉川文敬)

大分県の天気予報

PR

大分 アクセスランキング

PR

注目のテーマ