職場がある福岡市・天神は九州一の繁華街…

西日本新聞 オピニオン面

 職場がある福岡市・天神は九州一の繁華街。ごった返す地下街で外国人観光客とぶつかり、うどん一杯を食べるのにも行列。あまりの混雑にうんざりしていたが、今はあの「密」が少々懐かしい

新型コロナウイルス対策で福岡県に緊急事態宣言が発令された途端、華やかな商業施設は軒並み休業し、人通りはまばら。こんな天神は初めて見る

▼店々のシャッターが下りた地下街を歩き、子どもの頃に暮らした田舎町の日曜が浮かんだ。青果店も飲食店も大抵の店が休みだった。1年365日、1日24時間買い物できる今の都市生活が異常なのだろう

▼大分県中津市出身の作家、故松下竜一さんが唱えた「暗闇の思想」を思い起こす。自然を壊し公害をもたらす電力開発に反対した松下さん。誰かの健康を害してしか成り立たぬ文化生活ならそれを問い直せ、電力を浪費し物ばかり作って何になると訴えた

▼「月に一夜でも、テレビ離れした<暗闇の思想>に沈みこみ、今の明るさの文化が虚妄ではないのかどうか、冷えびえとするまで思惟(しい)してみようではないか」

▼日本は経済大国といわれて久しいが、それはどんな国か。地球規模で資源を収奪し、貧富の差を拡大させ、働く人を将棋の駒のように扱う国…ではいけない。緊急事態宣言の期間は長い。どうせ家にこもるなら真の豊かさや働き方を問い直す機会にしよう。松下さんが生きていればそう記すのでは。

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