コロナと公文書 後世の検証へ記録に残せ

 未知の感染症という脅威にどう対応したか。反省と教訓も含めて公文書で後世へ残すのは政府として当然の責務である。

 政府が、行政文書の管理指針に基づき「歴史的緊急事態」に指定している新型コロナウイルスの感染拡大のことだ。

 この制度は、東日本大震災(2011年)当時の民主党政権が原子力災害対策本部など震災関係の議事録を残していなかった問題を踏まえ、12年に導入された。指定は今回が初めてだ。先月10日に閣議了解された。

 歴史的緊急事態とは何か。社会的影響が大きく、その教訓が将来に生かされるもので、国民の生命や財産に重大な被害が生じるような事態-と規定されている。政府はその責任と使命を自覚し、公文書の作成と保存、公開に努めてもらいたい。

 管理指針では、政策の決定または了解を伴う会議の場合、開催の日時や場所、発言者、発言内容を記録した議事録や議事要旨などを作成しなければならない。新型コロナ関係では、政府の対策本部や専門家会議をはじめ、各府省庁の関連の会議などが該当するとみられる。

 一方で、情報交換を目的とするような会議であれば、確認事項や議論の進み具合などを記載した文書だけでよいとされる。この線引きが難しい。

 例えば、安倍晋三首相は一斉休校を要請したのは自らの「政治判断」だったと説明しているが、対策本部に先立ち首相と関係閣僚らが意見交換する非公式の「連絡会議」が重要な役割を担ったとも指摘されている。政府は「政策の決定や了解を伴う会議ではない」としているが、野党は「実質的に意思決定をする会議ではないか」と議事録の作成と公表を求めている。

 ここは会議の形式や位置付けに固執せず、政策決定に関わる政府の会議であれば、公文書の保存と公開を幅広く検討すべきではないだろうか。

 安倍政権はずさんな公文書管理が再三批判されてきた。財務省が決裁文書を改ざんした森友学園問題や、野党が資料要求をした日に招待者名簿をシュレッダーで破棄した「桜を見る会」などが思い浮かぶ。

 首相は新型コロナに対応した改正特措法に基づく緊急事態宣言を出した。私権制限も可能にする宣言であり、政策決定過程の透明化は一段と重要性を増したと言えるだろう。

 政府の判断は適切だったか。他に選択肢はなかったか。国民への説明と情報公開は十分だったのか。後世の批判と検証に堪え得る公文書で克明に記録を残さねばならない。まさに歴史的緊急事態に向き合う安倍政権の姿勢が問われている。

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