偏見で断られることも…LGBT、難航する部屋探し 解決策は

 現行制度では結婚が認められない同性カップルの間で、住まいの確保や老後の生活をどう支え合うかが課題になっている。性的少数者(LGBT)への偏見で部屋探しは難航することが多く、婚姻関係にないためパートナーの財産も相続できないという。7日に福岡市で開かれた「LGBTライフプランセミナー」(三好不動産主催、同市後援)では、今の制度の中での解決策を考えた。

 セミナーは、(1)賃貸住宅契約の課題(2)住宅購入(3)パートナーのための生命保険加入(4)カップルが公正証書で契約を結ぶと可能になること-が中心。福岡市は性的少数者のカップルを公的に認定する「パートナーシップ宣誓制度」を設けており、2人が宣誓して受領証を受け取ると市営住宅で同居できるほか、市立病院でパートナーの病状を説明してもらえる。冒頭、市職員が受領証の発行実績を59組(今年3月)と報告した。

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 同性カップルは婚姻が認められず、異性の夫婦にある相続や税制の配偶者控除といった待遇がない。

 性的少数者を支える同市のNPO法人「カラフルチェンジラボ」の三浦暢久代表理事(42)はこの現状や、日本では戸籍上の性別を変えるのに、諸外国と違って性別適合手術が前提となる点、差別を防ぐ包括的な法がないことを指摘した。

 続いて登壇したのは三好不動産(同市)の原麻衣さん(39)。同性カップルが入居できる賃貸住宅の仲介を2016年に始め、多くの「壁」を感じたという。

 入居が夫婦や親族に限られ、契約できる物件が少ない。パートナーが同性であることを親に言えず、保証人を見つけられない。1人暮らしと偽って契約し、パートナーと同居すると、火災発生時に契約者以外の保険金が支払われない-。これまでに賃貸の仲介で成約したのは約60件。原さんは「オーナーや管理会社にLGBTの知識が不足し、偏見で断られることが多い。理解を深めていく必要がある」と語る。

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 賃貸の課題を解決する方策として、同社の堂脇善裕さん(41)は住宅購入を挙げた。カップルがそれぞれ個別に住宅ローンを組む「ペアローン」だと負担が軽く、購入しやすいという。同居も問題はない。

 課題は住宅の所有権が2人の共有となる点。同居カップルの1人が亡くなると、相続で所有者になった遺族から「住み続けるなら買い取って」と求められる可能性がある。堂脇さんは「遺言で誰に財産を残すのか書いておくと、争いの防止になる」。また、カップルを解消する際に備え、財産の分け方を決めておくことも助言した。

 生命保険に入ってパートナーに葬儀費や生活費を残す方法も紹介された。同性カップルのパートナーを保険金の受取人にすることについて、生命保険会社が認める例が増えたという。

 遺産の相続では、法定相続人が最低限もらえる財産「遺留分」があるが、同社の植野直孝さん(36)は「生命保険は原則、遺留分の対象外。保険金の受取人はパートナーに、現金や預貯金は家族に、とすればトラブルを減らせる」と話した。

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 カップルが老後に互いの生活や金銭管理を支援し合い、さらにパートナーに財産を残すにはどうするか。司法書士の添田恵一さん(43)は、これらの契約書を公正証書で作成しておくことを提案した。

 具体的には、同性カップルが結婚に準じた関係であることを示す合意契約書▽認知症などで判断能力が落ちた時、パートナーに生活や財産管理を手助けしてもらうことを決めておく成年後見制度の「任意後見」契約書▽財産をパートナーに残す内容の遺言書-を公正証書で作っておけば、婚姻の意思表明や老後の備えになる。生命保険加入や、住宅購入でペアローンを組む際も役立つという。

 添田さんは「2人の人生設計を考えるタイミングで作成するのがポイント」とした。

 登壇者による意見交換もあり、性別適合手術やホルモン投与の注意点が挙がった。これらの処置を受けていると、住宅ローンの契約者が亡くなった際に残額の支払いを肩代わりしてもらえる「団体信用生命保険」や、一般的な生命保険に加入できない恐れがあることも報告された。 (編集委員・河野賢治)

【LGBT】同性愛のレズビアンやゲイ、両性愛のバイセクシュアル、生まれつきの性別と心の性が一致しないトランスジェンダーの頭文字を取った性的少数者の総称。電通ダイバーシティ・ラボが2018年、6万人に実施した調査では、性的少数者に該当したのは8・9%。近年は同性婚を認めないことを憲法違反とし、国に損害賠償を求める訴訟が各地で起きている。

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