車中泊エコノミー症候群、水分補給と適度な運動で防ぐ 熊本地震4年

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え⑪

 新年度の始まりです! 引っ越した方は地震に備えて安全な住居選び、家具留め、ハザードマップで避難場所の確認などをされましたか。震度7が2度も襲った2016年熊本地震で、専門家として後悔したことの一つが、エコノミークラス症候群(肺塞栓〈そくせん〉症)で2人の犠牲者が出たことでした。04年新潟県中越沖地震で注目された肺塞栓症による災害関連死について、教訓を啓発できなかったのは痛恨の極みです。

 熊本地震では、就寝中の犠牲者が出たため避難所に住民が殺到し、あふれた人は車中泊を余儀なくされました。指定避難所敷地内で寝泊まりしないと支援物資をもらえないこと。多くの指定避難所で東日本大震災後に導入された天井の耐震性を上げる工事がされておらず、天井脱落で避難所が使えなくなったこと。それらも拍車をかけました。

 私は地震発生の翌朝に現地入りしました。コンビニやスーパーなどあらゆる駐車場が被災者の車中泊で埋まっていました。

 後で知ったのですが、肺塞栓症で救急搬送される患者の多さに気付いた熊本市の病院は、犠牲者が出る前にと報道機関を呼び、車中泊者への注意喚起を訴えました。新しい報道と医療防災のタッグのあり方だったと思います。ただ、犠牲者が出た後と比べると報道量は圧倒的に少なく、残念な結果となりましたが。

 熊本では、硬い床や廊下の1人1畳未満のスペースで過酷な避難生活が続きました。トイレでは下水管が詰まっていて使用不可という張り紙もよく見かけました。トイレが絶対的に不足し、使えても汚いと感染症の恐れがあるとなれば、水分を控える人が続出し肺塞栓症のリスクが高まるのは当然の成り行きでした。女性用トイレは男性の3倍の数が必要だと認知されたのも熊本地震の後でした。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で災害が起これば、避難所に行かず車中泊を選ぶケースも予想されます。日頃から簡易トイレの作り方を覚えたり、100円ショップでも売っている携帯トイレを用意したり、備えが必要です。内閣府の避難所運営ガイドブックには、足の血流を良くする弾性ストッキングを配布すると記載されていることも覚えておいてください。

 熊本地震を教訓に災害医療人材養成のため、熊本大学病院と九州大歯学部による「多職種連携災害支援を担う高度医療人養成プログラム」が18年に始まりました。医療免許を持たない私も講師を務めています。次の受講生募集は来年1月から。熊本大学病院災害医療教育研究センターのホームページをご覧ください。(九州大助教 杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント エコノミークラス症候群(肺塞栓症)は、水分摂取と適度な運動で防げます。トイレに行かなくて済むよう水分摂取を控えるのは危険です。妊婦や高齢者、生活習慣病などの方は特に要注意ですが、若く健康なプロのアスリートでも発症します。防災用弾性ストッキングも予防に有効です。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府出身。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て2014年から九州大助教。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」

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