復興事業で立ち退き「生活が犠牲に」 熊本地震4年 益城町の県道拡幅

西日本新聞 社会面 壇 知里

 2016年4月の熊本地震で2度の震度7に見舞われ甚大な被害を受けた熊本県益城町の中心部では、土地区画整理事業と県道4車線化事業が進められている。いずれも災害に強い町を目指し、蒲島郁夫知事が掲げる「創造的復興」の象徴的プロジェクトだ。その陰で商売の再開が遅れ、仮設住宅での生活を余儀なくされる被災者も少なくない。県は「住まい再建が最優先」と強調するが、県の復興事業が生活再建の足かせになるという矛盾を抱える。

 「町民の生活を犠牲にしてまで進めるべき事業だったのか」。同町のテクノ仮設団地で食料品店を営む矢野好治さん(51)は、疑問が今も拭えない。

 町中心部を貫く県道熊本高森線は地震の際、大量のがれきで緊急車両が通れなくなった。その教訓から、総事業費135億円をかけ、町内の3・5キロを2車線から4車線に拡幅する。

 この県道沿いにあり、全壊した矢野さんの店舗は立ち退き対象に。県から提示された代替地は、現在に比べて奥まった場所にあり「商売に不向き」(矢野さん)。県の都合で再建できない状態になったにもかかわらず補償はなく、交渉を重ねても「こういう決まりです」の繰り返しだった。

 16年9月に「公費解体が終わるまでの1年程度」の予定で始めた仮設店舗の利用期限は今年9月。閉店も現実味を帯び、これ以上交渉を続ける余裕はない。悩んだ末に昨年6月、県の提示に応じた。新しい土地に店舗を再建し、今年9月から営業することになった。

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 土地区画整理事業では総事業費140億円をかけて町中心部の28・3ヘクタールに公共施設と宅地を一体的に整備する。県道4車線化とともに、地域の防災力を高める狙いだ。元の姿より良い形を目指すという意味で、県は「創造的復興」と呼ぶ。

 25年度完成予定の県道4車線化は用地の75%を取得済みで、3月末には幅5・5メートルの歩道を設けた「モデル地区」が完成。28年3月末の完了を目指す区画整理事業では、早ければ6月にも住宅建設が可能になる。

 ただ、県によると、町の仮設に入居する647世帯(3月時点)のうち約80世帯はいずれかの事業の影響で自宅の再建が滞り、仮住まいを続けざるを得ない。

 県益城復興事務所によると、区画整理に関係する地権者319人のうち、59人が今も仮換地契約に同意していないという。矢野さんのように、4車線化事業で営業再開が遅れた商店も少なくない。

 矢野さんも、復興事業の必要性は理解している。それでもくすぶる思い。「行政には、そこで暮らす住民が見えていないのではないか」 (壇知里)

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