外出自粛の今こそ…「サバイバルめし」の勧め

災害時の食を考える(3)

 災害時を乗り切る“サバめし”づくりの勧め-。九州大の比良松道一准教授(農学)と杉本めぐみ准教授(防災教育)が、大地震や風水害に遭った際、被災当初1週間をめどにした非常時の食生活をより良いものにするため、個人でできることを考える教育に取り組んでいる。その要点は、新型コロナウイルス対策で求められている在宅生活でも活用したい内容だ。

 食を通じて社会について考えるユニークな講座「自炊塾」を開講してきた比良松准教授と、防災専門家の杉本准教授がタッグを組んだ実践的な授業だ。2015年度から年1回開かれ、今年は1月22日、「阪神大震災25年に、これから備えておくべきこと」のテーマで催された。

 例年通り、その導入編として行われたのが、受講者らの持ち寄りで行われた「サバイバルめし」(サバめし)ランチ会。それぞれが大災害で耐久生活を余儀なくされた状況を思い描き、自分で用意できる非常食を披露し合う趣向だ。

 共通の「想定」は設けない。ライフラインが途絶したら。避難所に身を寄せることになったら。何とか自宅にとどまれるか。野宿生活を強いられるか…。ケース・バイ・ケースの適応力は、自分の身辺に起こり得る状況を想像できてこそ、養われると考えるからだ。

 主な持ち寄りメニューは写真で示した通り。備蓄しやすい缶詰を活用したメニューが目立った。「非常時には切り干し大根などの乾物や漬物が役に立つが、普段から使っている学生は少ない」と比良松准教授。

 お勧めはみそ汁づくりだった。過去の災害事例を見ても、被災直後に温かい汁物が提供されることは、なかなかないのが実情。みそ、削り節やいりこ、乾燥野菜や乾燥ワカメなどを備えておけば、おわんに入れて湯を注ぐだけでも十分おいしく出来上がるという。

 「とりあえずは、だしをきちんと取ってからでなければ、などと難しいことを考えなくても大丈夫」(比良松准教授)

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 それを踏まえ、杉本准教授が強調するのは、カセットこんろの有用性だ。電気やガスが途絶しても、火が使えれば「おいしく調理ができて食生活の質を向上させられる。加熱することで衛生管理もできる」。

 ガスボンベの予備も必要だ。こんろの発熱量や使う火力によって差はあるが、1本で約2時間はもつので家族の人数なども考慮して必要数をそろえておく。カセットこんろでも、土鍋を使えばご飯も炊ける。

 食品や飲料水の望ましい備蓄の量は「阪神大震災の後しばらくは3日分といわれていたが、今は1週間分が目安」だそうだ。一度にそろえるのは大変なので、杉本准教授のお勧めは「ローリングストック法」。普段の暮らしの中で少しずつ購入し、1週間分に達したら、賞味期限の近いものから消費して、その分を買い足すやり方だ。手軽に無理なく続けられるのが長所という。

 2人の提言に共通するのは、日常生活の中で備蓄した食品を、工夫しながら料理して適宜食べていくことの大切さ。比良松准教授は「非常食に関する知識やアイデアを持っている人でも、日ごろやったことがないことは、いざとなったとき実行するのは難しい。意外に簡単でおいしい、そんな体験があれば非常時に使える知恵や技が身につくはず」と話す。

 防災の心構えは、日々の暮らしの中で養われていくということだろう。当面、外出自粛の日々が続く。むしろこれを好機ととらえ、たまにはカセットこんろでご飯を炊いてみたり、みそ汁を作ってみたり、保存食をこしらえてみたり、試行錯誤してみたい。失敗してもそれは糧になるはずだ。 (特別編集委員・長谷川彰)

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