「万が一感染したら…」基礎疾患ある患者、命綱の通院 悲痛な叫び

西日本新聞 社会面 山下 真 井上 真由美

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、抗がん剤治療で免疫が低下したり、基礎疾患があったりして重症化リスクの高い人たちに不安が広がっている。各地で院内感染が発生する中、薬の処方や検査のため通院が欠かせないからだ。国が認めたスマートフォンなどを活用したオンライン診療は十分浸透しているとは言えない。患者や家族からは「感染が怖いけど通院せざるを得ず、どうしようもない」と悲痛な声が上がる。

 「息子は感染すれば命の危険がある。本当は外に出したくない」。福岡市南区の会社員貞松愛子さん(31)はこう漏らした。

 長男の諒大君(6)は2年ほど前に急性リンパ性白血病を発症。1年入院して現在は自宅療養している。抗がん剤治療の影響で免疫力が低下し、定期的に血液検査を受ける必要があるため、2週間に1回は区内の病院に通院している。

 通院には車を使い、消毒液を携帯する。病院も外来患者の付き添いを1人に制限するなど感染防止対策を講じる。それでも、待合室でせき込む人がいれば距離を取ってしまう。貞松さんは「万が一、感染したら…」と心配でならない。

 「がんの子どもを守る会九州北支部」(福岡県宗像市)には、同様に小児がんの子を持つ親から悩みが寄せられる。ある病院では入院中の付き添い者の交代は認めず、家族1人が24時間態勢で見守るケースも。長期入院する子どもの気晴らしとなるイベントを担うボランティアの出入りも中止されているという。

 代表幹事の山本章子さん(47)は「看病する家族は自分が体調を崩したらどうしようという不安がある」と話す。

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 臓器移植を受け、免疫抑制剤を服用する大学生の男性(19)も、重症化リスクを懸念する。「感染は命に関わる。だからといって、できる対策は健康な人と変わらない」

 通院先の主治医は手洗いやうがいの徹底を指示するだけ。友人は今も「若いから大丈夫でしょ」と出歩き、遊びに誘われることもある。休校中の大学が5月以降に再開すれば、電車で通学しなければならない。

 「友人の誘いを断りづらい雰囲気もあるし、通院も通学も怖く、正直行きたくない。感染が生死に影響すると恐れている人がいることをもっと知ってほしい」

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 東京都に住む女性(54)は、福岡県太宰府市で1人暮らしをする母(80)が気にかかる。母は心不全や糖尿病、呼吸器疾患を併発して入院し、1月に退院。薬の処方を受けるために通院が必要だが、新型コロナウイルスに感染すれば重症化の恐れもある。

 厚生労働省は感染拡大が終息するまでの時限措置として、初診からのオンライン診療を認めた。ところが、女性が県内5カ所ほどの医療機関に問い合わせたところ、「オンライン診療には対応できない」と断られた。母はやむなく、退院後に院内感染が起きた病院を受診したという。

 全国の病院では院内感染を防ぐため、風邪などの症状では診療を制限する動きがある。厚労省が調査した全国5481の病院のうち、16日現在、409施設が平日の外来診療を制限し、35施設が停止している。

 女性は「持病のある高齢者は薬が手に入らないことが一番困る。既往症がある患者には、郵送などで薬を受け取れる対応を普及させてほしい」と訴えた。 (山下真、井上真由美)

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