IoTで日本酒造り 老舗酒造とIT企業タッグ “24時間見守り”不要

西日本新聞 北九州版 岩佐 遼介

 創業170年以上の老舗酒造会社「溝上酒造」(八幡東区)とIT企業「ハピクロ」(八幡西区)が、あらゆる機器を通信でつなぐ「IoT」技術を活用した日本酒造りに挑んでいる。酒蔵に泊まり込み、24時間目を離せなかった生産態勢を変え、作り手の負担を軽減し、得られたデータから酒の品質向上も目指す。ハピクロは日本酒造りで使う管理や記録の技術を、他の食品の製造現場でも導入できるように、システムの開発を進めている。

 主に北九州市産米で日本酒を造る同酒造の溝上智彦社長(56)はこれまで15年間、10月から2月中旬ごろまでは新酒造りのために蔵で寝泊まりしてきた。

 日本酒造りでは、こうじともろみの温度管理が要とされる。夜中も断続的に起き上がって温度を確認し、こうじをかき混ぜたり、もろみのタンクを冷却する水の流量を調整したりしてきた。この時季には、商談や経営者同士の付き合いもできなかった。

 こうした状況を変えようと、市内企業のIoT導入を後押しする北九州産業学術推進機構(FAIS)イノベーションセンターの協力で、18年に同区の別のIT企業と共同研究を開始。温度をリアルタイムにスマートフォンで確認し、記録できるシステムを開発し、導入した。

 19年度からはハピクロと実用化を見据えた実証実験に入り、安価なセンサーを導入し、温度変化を見やすくするなどしてシステムを完成させた。

 溝上社長が蔵に泊まり込むのは変わらないが、遠隔で温度を確認できるため、商談などに顔を出せるようになり、夜も床に入ったまま対応できるようになった。溝上社長は「完成した酒の出来の良しあしを温度変化のグラフから検証できる。データを今後の酒造りに生かせる」と語る。

 食品の安全性を確保するための衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」は21年に猶予期間を終え、認証取得が義務化される。食品事業者は原材料の入荷から製品の出荷まで全行程の中で重要な工程の管理と記録が必要になる。

 ハピクロは温度計の改良や低コスト化などによって、幅広い食品製造業で運用可能なシステムの開発を進めている。同社の中田佳孝常務取締役は「ハサップ導入によって製造現場の負担が増えないようなシステムを開発したい」と話している。 (岩佐遼介)

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