筆で地域に恩返し 元浮羽町教育長「在野の書家」 コロナ終息心待ち

 「朝倉市 東峰村 日田市 豪雨災害復旧がんばろう」「飲酒運転ゼロ みんなの願い」

 うきは市浮羽町東隈上、国道210号バイパスの今川通交差点には、行き交うドライバーになじみの看板がある。設置したのは地元の今川通区老人クラブ。力強い字体のメッセージをしたためたのが近くに住む樋口文雄さん(88)だ。

 八女市立花町出身。教諭としての大半を旧浮羽町の小学校で過ごし、浮羽中校長を最後に定年退職した。その後、同町教育長を4年間務めたほか、区長や老人会会長を歴任するなど今も地域と深く関わり続ける。

 特に教育に対する思いが人一倍強い樋口さんに、「思わず小躍りするほど」の朗報が届いたのは今春のこと。新年度に今川通区から地元の御幸小に12人、浮羽中に11人が入学するという知らせだった。

 それまでは地元からの新入生は小中とも毎年2~5人程度。「なぜ急にこれだけ増えたのか理由は不明だが、子どもたちは地域の宝。新元号になって初の入学式にふさわしい明るい未来を感じた」と振り返る。

 ところが新型コロナウイルスの感染予防のため、各校の入学式は規模を縮小して行われる事態に。自分なりに児童・生徒に祝意と励ましの気持ちを伝えようと、「元気いっぱい 笑顔いっぱい あいさついっぱい」「頭 心 体」などのメッセージを添えた色紙を作り、自宅を一軒ずつ回って23人全員に届けた。

 色紙や看板にとどまらず、浮羽地区の各小中学校や公共施設などを訪ねると、“在野の書家”としての筆跡は多く見つかる。1953(昭和28)年の筑後川大水害直後に誕生した今川通区の50周年を記念して作られた「いまご音頭」では、作詞も担当した。

 「大人も子どもも今日(こんにち)は 大人も子どもも輪になって いまご音頭で いまご音頭で 総おどり」

 地域の祭りや集まりでは欠かさず流れ、いまご(今川通)の住民の多くが振り付きで口ずさめる歌として親しまれている。

 「青少年育成と文化活動が生きがい。生涯現役を目指して活動を続けたい」と樋口さん。自宅は浮羽中のすぐ南側にあり、教え子との記念写真などに囲まれた座敷で筆を走らせていると、「授業の内容が風に乗って聞こえてくるほどだった」。コロナウイルスによる休校措置が終わり、再び生徒たちの歓声が届く日を静かに待ち続けている。 (糸山信)

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