コロナ封鎖に耐える英領の離島 在住の日本人女性「住民は結束」

外出1日2時間、2人集まれば罰金

 英仏両国を隔てるイギリス海峡に浮かぶ英王室の属領ガーンジー島が、新型コロナウイルス感染拡大のため3月下旬からロックダウン(封鎖)されている。福岡県久留米市出身で、2009年から島で暮らすメイジャー菜穂子さん(36)が、助け合って苦境を乗り切ろうとする現地の状況を西日本新聞の取材に語った。

 島は人口約6万で、独立した政府や議会がある(外交と国防は英政府に委任)。島で最初の感染確認は3月9日。25日に感染経路不明の患者が出たとして地元政府が島の封鎖を決めた。不要不急の島外への渡航は禁止。通勤も医療、食品販売、福祉、電気水道など「キーワーカー」と呼ばれる職種だけ許されている。

 買い物以外の外出は1日2時間、散歩かランニング、サイクリングのみで、行き交う人と2メートルの間隔を取るよう義務付けられた。屋外で家族以外の2人以上が集まるのは禁止。2メートルの間隔や集会禁止を守らなければ罰金30ポンド(約4千円)が科される。

 医療機関は感染者とそれ以外で分離され、発熱や味覚異常、筋肉痛などの症状があれば受診前に専用窓口に連絡せねばならない。

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 菜穂子さんは結婚後、夫の出身地である島に移住。夫と、生後6カ月でダウン症の診断を受けた長女(6)、次女(1)と暮らす。

 夫は現在、在宅勤務。買い物時は使い捨て手袋を着け、店を出ると捨てる。食品は拭き取って除菌した後に冷蔵庫に入れ、冷蔵不要な物は車庫に3日間置いてウイルスの死滅を待ってから家の中に運び込む。

 休校中の長女は「学校に行きたい」「友達と遊びたい」と感情的になったり、夢遊症状が出たりしている。散歩に出ても人との距離を意識し緊張が解けない。

 先の見えない不自由な日々。それでも、菜穂子さんは「毎日家族でご飯を食べ、一緒に過ごせるのは幸せ」と前を向く。

 6年前、長女は白血病になった。英本土の病院に半年間入院し、夫と交代で付き添った。小児がん病棟は無菌状態。付き添いの家族がウイルスや菌を持ち込めばすぐに院内感染し、患者たちの命に関わる。院外での生活には細心の注意を払った。

 「毎晩眠れないほどつらかったけど、病院内で家族ぐるみの友達ができ、孤独感や不安とうまく付き合えるようになった。今回も、当時の経験が生きている」と菜穂子さんは語る。

 封鎖後、島では多くの人が「後に来る人のために」と買い物の量を抑え「行列に高齢者が並ぶと皆が先を譲った」との報道も。高齢者や医療従事者向けの時間帯を設定する店もある。自宅待機中の患者に買い物代行などをするグループができたり、飲食店が医療機関に食事を無償で届けたりと「島民は結束している」。

 菜穂子さんは会員制交流サイト(SNS)で「千羽鶴プロジェクト」を始めた。折り鶴の画像を投稿して患者や家族、医療従事者を励まそうと呼び掛け、既に200人以上が参加した。

 島の感染者は18日現在239人、死者(疑いを含む)13人。2週間の予定だった封鎖は2度延長され、25日に一部緩和される見通しだ。わずかだが、光が見えてきた。長女の入院中に母親仲間に掛けられた言葉をかみしめる。「明日のことも1週間後も半年先も私たちは分からない。今日一日を大事に過ごす。それが一番よ」

(江藤俊哉)

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