入国も検疫強化…「帰宅難民」の苦悩 交通機関使えず宿泊拒否も

西日本新聞 社会面 郷 達也

 新型コロナウイルス感染を水際で防ごうと、政府が海外からの全入国者に対して実施している検疫強化策が、「『帰宅難民』を生んでいる」と波紋を広げている。飛行機を含めた公共交通機関の利用自粛要請により、九州など地方在住者は家にたどり着くこともままならない。ホテルなどでの14日間の待機も要請されているが、検査で陰性が確認された後の滞在費は自費。宿泊拒否されるケースも相次いでいる。

 九州在住の40代男性は3月下旬、出張先のスペインから帰国した。成田空港の検疫場で列になって並んだが「(密閉、密集、密接を避ける)『社会的距離』を取る措置はなかった」という。

 その後、PCR検査を受け、応接室のような場所に集められた。換気が悪い上にスペースもあまりなく、トイレ以外は外に出ることができなかった。

 結局、知人に車で迎えに来てもらい、自身で確保した千葉県のホテルに滞在した。検疫時に「保健所から毎日電話でフォローする」と言われたが、同県の保健所から連絡が来たのは1週間後だった。

 14日間の待機では、陰性判明後のホテル費用は自己負担。男性の場合、宿泊、食事代込みで約10万円だった。国による支援は一切なく、感染防止対策も不十分に映る。「成田や羽田周辺で2週間も帰宅難民になれば、逆に体調不良になって感染リスクが高まる」

 水際対策は3月に開始。電車、バス、航空機、タクシーなどは使えず、家族の送迎など移動手段を確保し、自宅や自分で手配した施設での待機を要請。4月3日からは、検疫対象を全世界からの入国者に広げるなど対策を強化したが、中には、ホテルから宿泊を拒否されるケースも出ている。

 3月に英国から帰国した中部地方在住の男性は、友人に羽田空港周辺のホテル約10カ所に宿泊を打診してもらったが、軒並み拒否されたという。親族にレンタカーを借りてもらい、やむなく空港から直接帰宅。航空券やレンタカー代、親族の新幹線代などで約30万円かかった。「自宅までの移動手段がない多くの人が悩んでいると思う」と話し、「成田や羽田と主要都市への乗り継ぎ専用の便を飛ばすべきだ」と訴える。

 検疫を巡っては、スペインから帰国した沖縄県の10代女性が検疫の結果判明を待たずに飛行機で同県に戻り、翌日に感染が判明した事例もある。厚生労働省検疫所業務管理室は「感染者が各地で多発し、そちらに手が回っている。(待機者への)対応ができていないとの指摘は真摯(しんし)に受け止め、今後考えたい」と話した。 (郷達也)

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