幻の酒米醸す昭和の味 福岡・みやま市高田町の清酒「神力」

西日本新聞 夕刊 佐藤 弘

 味や銘柄より、誰と飲むかを重視する左党の一人ではあるが、それでも多少の好みはある。日本酒なら、少し酸味があって重ための酒だ。福岡県みやま市高田町の小さな蔵で、そんな酒に出合った。1878(明治11)年に創業した玉水酒造の純米吟醸酒「神力」である。

 5代目の山下茂さん(52)によると、神力は、大正から昭和の初期、九州や山口で栽培されていた幻の酒米。より酒造りに適した品種の出現などで廃れていたのを、ロマンを求めた地元の酒屋グループと栽培から始めて復活させ、1996年にその名を冠した商品として売り出した。年間生産量は、1升瓶(1・8リットル)換算で1500本程度。

 蔵を案内してもらうと、酒を搾る年季の入った木製の槽(ふね)が。「生きもの(微生物)相手に気を使いつつ、しっかりした麹(こうじ)を造るのが、うちのやり方」と山下さん。

 家族で営む蔵の杜氏(とうじ)は、農閑期に来てくれる地元のミカン農家。出荷先は、みやま市の中でも高田町が主体。原材料も造る人も飲む人も、オール地元の酒なのである。

 今のはやりは、淡麗で香りがあって飲みやすい酒。でも私は、米の糖化を速める人工的な酵素剤を使わず、麹の力だけで仕込む、パンチの効いたこの昭和の酒に一票だ。

 (佐藤弘)

 ▼玉水酒造 JR瀬高駅から車で10分。神力は1.8リットル4800円、720ミリリットル2400円。主力銘柄の清酒「玉水」のほか、甘酒、かす漬けなども製造。電話=0944(67)2001。

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