若者の自殺増加 「SOS」見逃さぬ社会を

西日本新聞 オピニオン面

 若者の自殺に歯止めがかからない。中でも、10代の小中高校生や大学生などが命を絶つ悲劇が増加傾向にある。何が彼らを追い詰めているのか、どんな支えが必要なのか。社会全体でいま一度、考えたい。

 厚生労働省と警察庁が昨年の自殺に関する統計をまとめた。総数は2万196人(前年比671人減)で、1978年の統計開始以来最少だった。ところが、世代別では10代だけ自殺者が3年連続で増加し、その数は659人(同60人増)と過去20年間で最も多かった。

 児童生徒・学生(516人)に加え、有職・無職の少年少女(143人)も目立ち、学校以外の場でも10代が孤立する状況がうかがえる。主な動機は、学友との不和や成績不振といった「学校問題」、うつ病をはじめとする「健康問題」、親子関係などの「家庭問題」で、これらが複合、連鎖している。

 重要なのは、こうした問題の背後に横たわる社会の病理にも目を向けることだろう。

 多くの学校現場では、受験のための偏差値が幅を利かせ、いじめなどへの対応が後手に回りがちだ。家庭内の虐待も後を絶たず、離婚の増加でシングルマザーも増え、それに伴う子どもの貧困も深刻である。自殺願望を持つ人を誘うインターネット情報の流布、確かな人生設計が見通せない非正規雇用の増加、隣人関係の希薄化といった問題も見逃せない。

 政府は自殺総合対策大綱(2007年策定、5年をめどに改定)の中で若者の自殺防止を重点施策に掲げている。スクールカウンセラーら専門家の学校配置に加え、近年はSOSの出し方に関する教育の推進、会員制交流サイト(SNS)を活用した相談事業なども進めている。

 これらは現場に浸透し、十分に機能しているか。それぞれの取り組みを検証すべきだろう。10代では遺書がなく突発的とみられる自殺例も多く、きめ細かな心のケアが必要だ。

 目下の新型コロナウイルスの感染拡大も、若い世代に苦しみをもたらしている。休校の長期化に伴う受験準備の乱れ、出入国制限による留学の断念、就職の内定取り消し、アルバイト先の減少といった問題だ。

 日本社会は閉塞(へいそく)感が続く。大人が余裕を失い、若者のSOSを見逃していないか。行政や学校任せにせず、私たち一人一人が耳を澄ませておきたい。

 20、30代まで含めた死因で見ても最多は自殺である。これは先進7カ国(G7)の中で日本にだけ見られる現象だ。少子化が加速する現状も踏まえ、若者の悲劇に歯止めをかけることは喫緊の課題だと認識したい。

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