食、農の循環へ「筑後七国」構想 広がり模索 研究者が提案へ

西日本新聞 くらし面 佐藤 弘

 食卓などから出る生ごみを、循環施設(バイオガスセンター)で資源に変える福岡県の大木町「くるるん」とみやま市「ルフラン」。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の考え方に沿う先進事例と言える。これをどう「面」へと広げていくか。両市町の構想実現に深く関わった元長崎大准教授、「循環のまちづくり研究所」の中村修代表(62)が温めているのが、「筑後七国による地域循環構想」だ。 

 大木とみやまの実践を、同じ南筑後地域の八女、大川、筑後、柳川各市と広川町の7市町に広げ、一体的な取り組みに発展させる提案である。

 現在、同地域で稼働(予定を含む)する三つの焼却施設と四つのし尿処理施設の更新時期を捉え、順次、循環施設に移行。2060年に地区全体で七つの循環施設と一つの焼却施設に置き換える-。これが構想の骨子だ。

 いずれも農村地帯で、循環施設を導入しやすい環境にある。実現すれば、全体の施設建設費で150億円、維持費で年10億円の削減、循環施設などで新たに400人の雇用が見込め、二酸化炭素(CO2)の削減などが期待される。

 家庭の生ごみのような一般廃棄物の処理義務は、市町村にあり、その基本計画はおおむね5年おきに作られる。ただ、その際に念頭に置かれるのは、それから先10年程度の社会像。「人口減や新たな自治体再編など状況の変化で焼却炉の能力が余るなど、結果として無駄な投資となる施設も出てくる」(中村さん)

 関係自治体が20~30年といった長期的視野で一体的に議論できる場が欲しい。そう考える中村さんは、南筑後地域の温暖化防止推進委員などに呼びかけて「筑後七国住民会議」を立ち上げる準備を進めている。次代を担う地元の中高生も交えて議論を深め、7市町の首長に提言する方針だ。

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 生ごみと農業をつなぐ循環は、農村部以外では不可能だろうか。「都市部なら周辺との地域連携で処理する策がある」(中村さん)

 例えば、都市部にある食品工場やレストラン、スーパーなどの事業系生ごみを集め、市内の1次加工場で濃縮処理した「液肥の原料」を製造し、隣接する農業の盛んな自治体が建てた循環施設に運ぶやり方。

 気になる臭気の問題も含め、レストランや直売所など食と農をつなぐ施設の併設によって、“迷惑施設”と受け止められがちな場がにぎわいの空間に変わり得ることは、既に「くるるん」などで実証されている。

 原料の提供を受けた自治体では、できた液肥だけでなく、メタン発酵の過程で生成されるガスで発電した電力や、廃熱を近隣の農業ハウスに無償提供するなどして、農村振興の一助にする道も考えられる。

 家庭系の生ごみはどうか。05年に岡山県倉敷市(48万人)と合併した旧船穂町地域(7800人)では、1997年から生ごみを、各家庭に配布した小型バケツで可燃ごみと同じように玄関先から回収し、有機肥料に再生してきた。現在、この仕組みに賛同する500世帯が参加している。

 この仕組みを、ビルや集合住宅が林立し、人の入れ替わりも激しい都心部に導入しようとすればハードルは高い。だが、一戸建て住宅が多く公民館活動が盛んな郊外地区なら、検討の余地はあるのではないか。

 中村さんは「大都市だからと思考停止に陥ることなく、どうすれば理念を形にできるのか。市民も行政も、そう考える姿勢がないままでは未来に対して無責任だ」と語る。

 狙い通り、約11万世帯(総人口約28万人)が暮らす「筑後七国」で議論が起これば、一石を投じることになりそうだ。

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 食品ロス問題について、環境保全の分野にまで視野を広げながら、解決の糸口を考えてきた。食品ロスと生ごみ処理はコインの裏表だと、改めて思う。

 食を考える際、私たちは主に「食べる」しか考えず、次にある「出す」行為を忘れがちだ。だが、「食べる」と「出す」は一対。出したものを土に返し、食べ物を作ることで初めて循環の輪がつながる。

 今だけよけりゃ、いいんですか? 記者が昨年12月、福岡市のごみ焼却場で目の当たりにした、あの手付かずの廃棄食品は、私たちにそう問いかけているような気がしてならない。(佐藤弘)

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