リスク高いクルーズ船受け入れ 乗員集団感染、水際対策に緩み

西日本新聞 長崎・佐世保版 野村 大輔 岡部 由佳里

 長崎市の三菱重工業長崎造船所香焼工場に停泊中のクルーズ客船「コスタ・アトランチカ」で発生した新型コロナウイルスの集団感染は、起こるべくして起きたと言える。船会社の責任が大きいのは言うまでもないが、客船という「密」な「物件」を受け入れるリスクを許容した三菱や長崎県、市も、そこにウイルスを持ち込ませない水際対策を徹底すべきだったが、不十分だった。

 客船の長崎入港は中国での感染が深刻だった1月29日。上海で予定した修繕工事を香焼工場に変更し、工事は2月20日から3月25日まで実施。船会社は4月末までの停泊を求めていた。

 動くホテルとも称される客船だが、乗員たちの多くは船底に近い狭い空間で寝泊まりする。そこが感染の温床になり得ることは「ダイヤモンド・プリンセス」の事例から明らかだ。そもそもリスクの高い物件を市内の工場の岸壁に受け入れる以上、その中にウイルスを持ち込ませないことが肝要だった。三菱も当初は「乗員が船を降りることはない」などと説明していた。

 だが実際には、自由に下船して岸壁を歩く姿が工場作業員らに目撃されていたほか、チャーターバスやタクシーで市内に出掛けることもあったという。

 県が船外への外出自粛を三菱に求めたのは3月13日。感染拡大に備える改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が成立した日だ。国内全体では感染が広がりつつあったが、この時点で県内の感染確認はゼロ。そこにすべての関係者たちの「緩み」がなかったか。

 それを象徴するような場面がある。船内で初めて感染が確認された今月20日の記者会見で三菱側は「3月14日以降の乗り降りはない」と明言したが、22日の会見では一転し「船会社の判断で乗員の下船があった」と訂正。中村法道知事は「大変残念」と不快感を示した。

 もちろん、乗り降りには市内の医療機関への通院など必要な事情が含まれていることも理解はできるが、もたらされた結果が重大すぎた。厚生労働省クラスター対策班の鈴木基・国立感染症研究所感染症疫学センター長は感染の経路について(1)船外に出た乗員が市内で感染(2)入れ替わりで乗船した船員が感染していた-という二つの可能性を指摘する。

 実は、船はアトランチカにとどまらない。同じ船会社の2隻が工場に停泊し、それぞれ669人と393人の乗員らがいる。現在は体調不良を訴える人もおらず、県福祉保健部の中田勝己部長は「対応は議論していない」としている。(野村大輔、岡部由佳里)

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