コロナ雇用危機 「非正規」の暮らしを守れ

西日本新聞 オピニオン面

 新型コロナウイルスの感染拡大で雇用危機が現実味を帯びてきた。立場が弱い契約社員や派遣社員といった非正規労働者を中心に各地で、解雇や雇い止めに関する悲鳴のような相談が急増している。

 雇用は働く人の暮らしや尊厳だけでなく、地域社会を維持する土台でもある。年内には失業者が100万人以上増えると予測する専門家もいる。政府と経営者、労働組合や支援団体が協力し、雇用と暮らしを守ることに全力を挙げてほしい。

 2008年のリーマン・ショックの際、多くの非正規労働者が仕事と住む場所を失い、行き場のない人に食事などを提供する「年越し派遣村」が東京の真ん中にできた。今回の経済の落ち込みは当時を上回る恐れがある。リーマン時は製造業の派遣社員の失業が目立ったが、今回は非製造業を含め幅広い業種、雇用形態に広がっている。

 しかも、非正規労働者が雇用の調整弁となる実態は大きく変わってはいない。連合総合生活開発研究所のアンケートでは、新型コロナによる雇用や収入への影響はパートやアルバイトの方が正社員より大きく、派遣や契約の社員で解雇の不安を抱える人の割合が高かった。

 背景には政府が進める働き方の多様化もある。雇用全体の約4割が非正規になった。さらに今月からは同一労働同一賃金を大企業に適用するなど待遇格差の是正にも取り組んでいる。こうした改革には歓迎すべき面もあるが、業績悪化のしわ寄せを非正規労働者が受けやすい構図は手付かずのままだ。

 今回、企業にはリーマン時のような批判を浴びぬよう、解雇や雇い止めを一斉ではなく時間差で行う懸念が出ている。実態を把握できず、政府の対応が遅れてはならない。

 今回の事態を受け政府は、業績悪化で従業員を休業させた企業への雇用調整助成金の対象を特例で非正規に広げた。離職や廃業で困窮した人に家賃を補助する住居確保給付金の対象を、営業自粛などで収入が減った人にも広げる措置も取った。

 ただ雇用調整助成金は手続きが煩雑で時間がかかり、申請せず従業員を退職させるケースも出てきた。政府は手続きの簡素化、迅速化を進めるべきだ。

 さらに緊急の課題がフリーランスを含む個人事業主をいかに守るかだ。休校に伴う保護者の休業補償では対象になったが、雇用調整助成金や失業保険は制度の枠外である。

 政府はセーフティーネットの強化を急ぐ必要がある。1人当たりの労働量を減らし雇用を維持するワークシェアリングの導入も労使で検討してほしい。

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