地域事情に応じ、女性の負担減らす努力を 避難所のジェンダー問題

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え⑫

 4月から九州大学男女共同参画推進室へ異動になりました。よろしくお願い致します。この機会に本連載で災害時のジェンダー問題も紹介して参ります。

 熊本地震の際、女性が避難先で、25年前の阪神大震災と同じく過酷な状況に置かれたと感じました。熊本から県外の親戚宅に避難した当時10代前半の少女が親戚の男から性的被害を受ける事件も起きました。熊本県内の避難所での性的被害も多数報告されています。

 発災後、ドメスティックバイオレンスの問題だけでなく、避難所での炊き出しや掃除などが女性だけの分担になり、不便な暮らしの中での子供や高齢者家族の世話ものしかかります。女性も仕事を持ち社会進出が進む中、従前の価値観は女性にだけ震災時の役割負担を上乗せするのです。

 九大生に授業で、災害時に女性は仕事にも行けず、母親だけの「ワンオペ育児」になりがちだと話すと、男子学生が「旦那さんは何をしているのですか」と質問しました。平等に育った若い世代は、災害時の苦労を夫婦で分担せず男性だけが仕事に行ける状況に、当然の疑問を抱いていることが分かり、希望を見いだす気持ちになりました。

性の多様性にも配慮を

 女性の負担軽減のためにも、できるだけ安全な住宅選びと備えで災害時に避難せずに済むよう、日頃の防災を社会全体で進められたらと願わずにおれません。

 授乳スペースがないだけでなく、やまぬ余震と大勢の雑魚寝による不眠、夜間の赤ん坊の泣き声に対する周囲の冷たい視線に耐えられず、避難所から出ざるを得ない母子が熊本でも多かったようです。それは車中泊に小さなお子さんを抱えた家族が多かったことからも分かりました。

 母子だけの避難所が熊本地震の際に設けられましたが、ある自治体では乳児以外の兄弟や夫の在室は認めないなどのルールがあり、利用者は2組だけでした。東日本大震災の時に兄弟や祖父母も一緒の避難で母子が休めなかった教訓を踏まえた試みでしたが、熊本では足かせになりました。地域事情に応じた弾力的な運営が求められます。

 2018年に起きたカリフォルニアの山火事の際に現地踏査したアメリカ赤十字の避難所も、男女別と家族、ペット用の4タイプだけで、トランスジェンダーの方に配慮したタイプはありませんでした。世界的にまだ取り組まれていない状況です。性の多様性に応じた避難所をどう創(つく)っていくか。皆で問題を認識し、誰もが安心できる安全な避難所を実現する必要があります。(九大准教授 杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント 避難所に男女別のトイレと着替え場所は必須。物資の配布作業は、生理用品などもあるので女性も担当すべきです。授乳時の配慮のため女性専用スペースや、夜中に外に出なくて済む母子だけの避難部屋も必要です。防犯ブザーや笛を持参し、女の子だけでなく男の子の安全にも注意し、1人でトイレに行くのは避けましょう。危険を感じたら迷わず自治体の相談所(福岡県なら「あすばる相談室」)などに連絡しましょう。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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