中国が南シナ海に行政区 コロナ禍に乗じて実効支配

 【北京・川原田健雄】中国政府が南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島と南沙(同スプラトリー)諸島を管轄する行政区をそれぞれ新設し、波紋を広げている。両諸島の領有権を争うベトナムやフィリピンは強く反発。関係各国や米国が新型コロナウイルスへの対応に追われる中、実効支配を強めようとする習近平指導部の思惑が透ける。

 中国政府は2012年、南シナ海の各諸島を管轄する自治体として海南省三沙市を一方的に設置。今回は同市内に行政区の「西沙区」と「南沙区」を新設した。

 今月中旬の発表によると、西沙区は西沙諸島とその周辺海域のほか、中沙諸島も管轄し、区政府を永興(英語名ウッディー、ベトナム名フーラム)島に置く。南沙区は南沙諸島と周辺海域を管轄し、区政府は永暑(英語名ファイアリクロス)礁が所在地となる。

 中国政府は14年以降、南シナ海に次々と人工島を造成。滑走路の整備やミサイル配備を進めてきた。行政区新設で軍事拠点化をさらに加速させるとみられる。中国外務省は「国内法に従って管轄海域の名称を決めて発表するのは正常な措置だ」と強調する。

 こうした動きに対し、ベトナム外務省の報道官は「ベトナムの主権を著しく侵害する行為で強く抗議する」との声明を発表。「南シナ海や地域の状況を複雑化させるだけだ」と中国側に決定の撤回を求めた。

 フィリピンのロクシン外相も「国際法とフィリピンの主権の双方を侵害している」とツイッターで非難。行政区設置に加え、中国側がフィリピン海軍の艦船にレーダー照射したとして、外交ルートで抗議したことを明らかにした。

 新型コロナを巡る混乱に乗じて、領有権の既成事実化を進める中国の動きを米国も問題視する。ポンペオ国務長官は23日、東南アジア諸国連合(ASEAN)とのテレビ外相会議で「行政区の設置を一方的に発表した。強く反対する」と中国を批判した。

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