「経営陣は将来像を示せ」 かんぽ不正販売、出口治明氏に聞く

西日本新聞 総合面 宮崎 拓朗

 -かんぽ生命保険の不正販売問題の原因はどこにあると思う。 

 「郵政グループは貯金、保険という両金融事業の収益がなければ、郵便事業が成り立たないといういびつな組織構造になっている。そのために金融事業に無理な営業目標が設定され、その数字を達成しようと現場の社員たちが無理をした。コンプライアンス(法令順守)の意識も低く、起こるべくして起こった問題だ。歴代経営陣がこうした構造的な問題を放置してきたことが最大の原因だと考えている」 

 「日本は世界一といわれるほど生命保険が普及し、過剰供給の状態になっている。他社との競争が激しい上、民営化が進まないので、新商品の開発が制限されるというハンディを背負っている。主力商品の貯蓄型保険は、長引くゼロ金利政策で商品としての魅力が失われている」 

 -かんぽの契約者は高齢者に偏っている。 

 「高齢者は病気などで出費することが多い。いつでも使える現金を持っておくことが大切で、保険などの金融商品を購入する必要性は低い。かんぽの営業方針は金融商品購入の原理原則に反している」 

 -保険料の二重払いや被保険者を変える「ヒホガエ」、払い込み済みの保険を解約させて新規保険に乗り換えさせるなどの悪質な手口が明らかになっている。 

 「払い込みが終わった保険はそのままにしておくべきで、常識では考えられない。おかしな事例が何万件も起こっている背景には、不正を行って業績を上げている社員が、他の社員に悪知恵を授けたとしか考えられない」 

 -他の生命保険会社でも同じような問題はあったのか。 

 「昔は顧客が不利益になるような乗り換え契約をよく見聞きしていた。だが、バブル崩壊後に多くの保険会社が経営破綻し、2005年には保険金の不払い問題が相次いで発覚した。行政から厳しい指導を受け、業界内の改善が進んでいった」 

 -再発防止策は。 

 「コンプライアンス教育や業績に傾斜しやすい給与体系の見直し、不正を通報する外部ルート作りなど一つ一つの問題点について責任者と期限を決め、改善の進捗(しんちょく)状況を第三者機関がチェックする仕組みを作ることが望ましい」 

 「経営陣がグループの将来ビジョンをしっかりと提示し、政治や市民に議論を働き掛けることが何よりも重要だ。現在は郵便、貯金、保険サービスを全国一律に提供するユニバーサルサービスが義務付けられているが、もうからない部門からは手を引くという民営化のあるべき姿と矛盾している。かんぽ生命とゆうちょ銀行は完全民営化を進めればいい。郵便事業については、ユニバーサルサービスを守るのであれば、別途、国民的な議論が必要だろう」

(聞き手は宮崎拓朗)

◆出口治明氏(でぐち・はるあき) 1948年生まれ。日本生命を経て、2008年、ライフネット生命を開業し、社長、会長を務めた。かんぽ不正販売問題で特別調査委員会のアドバイザーに選任された。

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