「船内感染」横浜の教訓は 最前線に立った医師ら語る過酷な現場

西日本新聞 社会面 一ノ宮 史成 下村 ゆかり

「医療崩壊防ぐ広域連携を」

 大規模な船内感染の前例に学ぶべき教訓は何か-。長崎市でクルーズ船「コスタ・アトランチカ」の乗員に新型コロナウイルスが広がる中、2月の横浜港(横浜市)のクルーズ船集団感染で最前線に立った医師らが西日本新聞の取材に応じた。閉鎖空間における防疫の困難さを振り返り、「長崎県の医療崩壊を防ぐため、近隣県との広域的な医療連携を整えてほしい」と訴えた。

 「誰も経験したことがない特殊な場所で、混乱はあったがベストを尽くした。その反省を生かせば、長崎でもより良い対応ができるはずだ」

 横浜港に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に、災害医療チーム「JMAT」の一員として乗り込んだ横浜市医師会常任理事の川口浩人医師(49)は、こう語った。

 700人以上の乗船者に感染が広がった過酷な現場だった。2月18日に乗り込み、下層部に隔離された乗員の問診を担った。豪華客船とはいえ、船内の通路や部屋は狭く、閉ざされた「密」の空間。防護服に身を包み、1メートルの距離を取った問診中にせき込む乗員も多く、自身の感染の不安に駆られた。ドアを開けるたびに手や指をアルコール消毒した。

 船内で、「清潔」「非清潔」区域を分けて感染拡大を防ぐゾーニングも「完璧ではなかった」。清潔区域にある現場本部と非清潔区域の境はパーティションで仕切られていただけで、靴を替えずに区域を往来する人もいた。「フロア(階)ごとにゾーニングするなど、より効果的な方法がある」

 幸いにも、延べ約250人のJMATメンバーの感染はゼロだったが、厚生労働省の検疫官ら医療支援者には感染者も出た。「紙のカルテに付着したウイルスへの意識が薄かった、との指摘もあった」と、川口氏は注意を促した。

 今後、長崎のクルーズ船で心配されるのは、重症者を受け入れられる病床の逼迫(ひっぱく)だ。横浜の事例は市中感染が広がっていない時期だったため、神奈川県外の近隣自治体の医療機関が対応し、事なきを得た。現在は福岡県など九州も感染が深刻化しているが、「長崎県境を越えて負担を分散し、医療提供体制を守らないといけない」という。

     ■      

 長崎での停泊が長期化していけば、横浜と同様に乗船者の「常備薬不足」の問題も起きかねない。

 2月中旬、ダイヤモンド・プリンセス近くの横浜検疫所などで調剤作業に当たった横浜市の薬剤師、田中大嗣さん(43)は「外国人乗客への対応が大変だった」。依頼書を基に薬を処方していったが、アラビア語など読めない言語で記されていたり、日本国内で未承認の薬も多かったりして戸惑った。「対面での聞き取りや、日本の『お薬手帳』のようなものがない条件下での作業だった。長崎でも、具体的な対処方法を考えておくべきだ」と提案した。

 (一ノ宮史成、下村ゆかり)

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