「オンライン授業」で変わる学び 取り組み多彩「まずは一歩」

西日本新聞 くらし面 金沢 皓介 四宮 淳平 本田 彩子

 新型コロナウイルスの感染拡大により学校や大学で休校が続く中、インターネットを使ったオンライン授業を導入する動きが本格化している。当たり前だった対面授業は様変わりし、どんなスタイルが望ましいのか。福岡県内の学校の取り組みからヒントを探った。

 北九州市八幡西区の自由ケ丘高は2018年度の入学生から通信機能が備わったタブレット端末を配布。20年度からの大学入試制度改革をにらんだもので「ポートフォリオ(活動記録)」の記入などに活用してきた。機器の配備が進み、生徒も使用法を理解していたことから、違和感なくオンラインによる授業の議論が進んだという。「失敗はあるかもしれないが、先生たちも勉強しながらピンチをチャンスに変えたい」と福江展之教頭(45)は話す。

 生徒の集中力などを考え、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使った授業は15~20分程度にしている。3年の英語担当、野間慶吾教諭(43)は短時間でも一人ずつへの声掛けに努める。「目標が見えず受験への不安も抱えているはずだ。顔を見ることで安心させられる」

      ◇       ◇

 福岡市博多区の東福岡学園は、運営する中高のうち、中高一貫コースでオンラインの学習支援を始めた。

 13日、今井孝治教諭(34)は専用ツールを使ったクイズ形式で英語学習の支援を行った。主な対象は高校2年生。文章の空白に入る適切な英単語を4択で選んでもらう。1問ごとに上位の順位も表示されるなどゲーム感覚で学べる。

 今井さんは「こういう時だからこそ、みんなを楽しませてあげたい。互いにつながることで安心感も与えられる」と説明する。一方で「オンラインではオフライン(対面授業)と同じことを求めすぎないことが大切」と主張する。聞き取りづらい生徒がいることを想定し、普段以上にゆっくり話し反応に気を配る。

 学校では生徒のやる気を促すために叱る教員は少なくないがオンラインでは「逆効果」とも。ゲームをして過ごした週末でも注意はしない。「問われているのは自己管理の力。流れが決まっている学校生活とは違い、自分で選択、決断をすることを通して自立を促せる」と語った。

      ◇       ◇

 オンラインへの切り替えは大学でも進む。福岡県立大(福岡県田川市)の奥村賢一准教授(社会福祉学)は、13日からZoomで講義を始め、最大50~60人の学生が受講する。

 準備期間は短かったが学生側の理解は早く混乱なく導入。9割の学生が受講でき、通信環境により参加できない学生には授業動画を後で提供するなど個別対応することにした。

 講義は、発表資料作成ソフト(パワーポイント)などで作った資料を画面に映しながら説明する形式のほか、専門分野を研究する少人数のゼミ授業でのグループディスカッションも。奥村准教授は「討論は受講生の多い授業でも今後、取り入れていきたい。ただ、オンラインではできない内容もあり、授業計画の練り直しも必要になる」と話した。

 画像が映らないなど、トラブルの報告も複数あり、アンケートを取って改善を重ねていく。奥村准教授は「対面授業ができないから何もしないとなると、みんながしんどくなる。オンラインはリスクにばかり目を向けがちだが、セキュリティー対策を行った上で、今だからこそできる授業方法の一つとして積極的に活用するべきだ」と強調した。

      ◇       ◇

 オンライン授業は学校に行かなくても学べる一方、通信環境や情報通信技術(ICT)機器の影響を受けやすい。また、体育などの実技習得が難しいなどの課題はある。

 それでも、休校の長期化で子どもの学びの遅れが深刻になりつつある現状に、その必要性は高まる。九州ではICT環境が整う私立学校が積極導入しているのをはじめ、佐賀県や熊本市などの一部自治体が公立学校での取り組みに着手。学習動画配信のウェブサイトを2月に立ち上げた福岡市教育委員会も各家庭の通信環境などの調査を進めており、オンライン教育のあり方の検討を始めている。

 13日、オンラインによる始業式に挑戦した福岡市西区の福岡西陵高。和田美千代校長は「初めての試みで至らないところもたくさんある。それでもまずは第一歩を踏み出せた」とカメラの向こうの生徒たちに語り掛けた。

(金沢皓介、四宮淳平、本田彩子)

児童生徒向け「1人1台」前倒し

 オンライン学習に不可欠な学校現場の情報通信技術(ICT)の整備状況について、全国の小中学校に配備されている教育用コンピューターは昨年3月時点で児童生徒5.4人に1台にとどまる。文部科学省は、2023年度までに児童生徒が1人1台のパソコンを使える環境を整える「GIGAスクール構想」を打ち出しているが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休校で、家庭での学習機会が増えたことを踏まえて構想の大幅な前倒しを決定。20年度補正予算案に、パソコン整備に加え、通信環境が整っていない家庭に貸し出すモバイルルーター、学校でのカメラやマイクなどの関連費用2292億円を計上。本年度内の実現を目指し、オンライン学習を支援する考えだ。

PR

教育 アクセスランキング

PR

注目のテーマ