存在感を増す「言語聴覚士」 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

連載:吃音~きつおん~リアル(20)

 「一緒に声を出してみましょう」。穏やかな笑顔の言語聴覚士が、吃音(きつおん)のある男子高校生と音読します。授業中の発表や自己紹介、部活動の報告など多彩な場面を想定して、力を抜いた話し方も練習していきます。すると、苦手だった音読が滑らかになり、「授業中の発表も頑張ります」と、笑顔を見せるようになりました。

 「吃音外来」の担当医である私は、吃音に悩む人の相談を受けていますが、十分な時間が取れないこともあります。そこで、2人の言語聴覚士の出番です。丁寧な発話訓練やこまめな相談が必要な患者は、私と一緒に支援してくれます。

 言語聴覚士とは1999年に誕生した国家資格で、「話す、聞く、食べる」に問題がある人を支えるスペシャリスト。現在、3万人以上が医療や保健福祉、教育の現場で働いています。有資格者が17万人を超える理学療法士に比べれば、まだ数は少ないのが現状です。

 吃音がある人への支援は、明治時代の教育者、音楽教育で有名な伊沢修二氏に始まります。1903年、東京に吃音矯正所「楽石社」を設立し、30年間で3万人を矯正したという記録が残っています。当時は「治さないといけない悪癖」と捉えられていました。

 60年代に入ると、各地の小学校に通級指導教室「ことばの教室」が設けられ、当事者団体「言友(げんゆう)会」も発足しました。支援者が多様になるに従って、「吃音は矯正すべき悪癖から、うまく付き合っていくもの」という指導方針に変わっていきます。

 そして約20年前、幅広い年代をサポートする言語聴覚士が誕生したのです。言葉によるコミュニケーションは社会生活に欠かせません。豊富な専門知識と当事者の「困り感」を想像できる力を持った言語聴覚士の存在感は今後、もっともっと増していくでしょう。

 (九州大病院医師)

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