コロナ補正予算 「命と暮らし」守る議論を

西日本新聞 オピニオン面

 新型コロナウイルス感染拡大に対応した緊急経済対策のための2020年度補正予算案の審議がきのう、国会で始まった。

 国民の命と健康に関わる緊急事態である。休業や外出の自粛要請に応じて収入が激減するなど、生活に深刻な影響を受けている人たちへ一刻も早く救援の手を差し伸べるべきだ。与野党がスピード重視の姿勢で足並みをそろえたのは当然といえる。30日には成立する見込みだ。

 総額25兆円超は補正予算案としても異例の巨額である。政府が給付金の対象を「減収世帯に限定して30万円」から「国民1人に一律10万円」へ転換したことが影響した。組み替えで補正予算額は一段と膨らみ、国会提出も1週間遅れてしまった。

 立法府として、これを素通りさせてもらっては困る。早期成立が前提であっても、与野党と政府には限られた時間内で濃密な議論を繰り広げてほしい。

 政府は緊急事態宣言を全国へ拡大し、人との接触を「最低7割、極力8割」減らすよう求めた。多くの自治体がこの厳しい目標達成に向けて店舗や事業者に休業を要請している。

 しかし、地方の側が「休業要請は補償とセットで」と国に補償を求めているのに対し、国はこれまでかたくなに応じていない。辛うじて認めたのは、補正予算案に盛り込まれた地方向け臨時交付金を、休業要請に応じた事業者への協力金や支援金として活用することだ。

 この臨時交付金には総額1兆円の上限があり、地方は大幅な増額を要望している。感染拡大防止の実効性を高めるために何を優先すべきか。最大限の対策が求められながら、財政難との板挟みになっている地方の窮状に配慮した論議を望みたい。

 一方、補正予算案には本当に今必要なのかと首をかしげるような事業もある。収束後を見越して観光業や外食産業などを後押しするキャンペーン政策だ。クーポンやポイントの付与、チケット割引などで総額1兆6794億円に及ぶ。いずれは必要になる事業かもしれないが、目下の「ステイホーム」の掛け声との違和感は禁じ得ない。

 コロナとの闘いの最前線である医療の崩壊を起こさないために、現場への支援をもっと手厚くできないか。マスクや防護服が足りないと訴える悲鳴に耳を傾けるべきだ。所得減少世帯には一律10万円給付で十分とは言えまい。新たな支援も必要だ。

 安倍晋三首相はきのうの衆院本会議で「長期戦の覚悟」を訴えた。そうであれば、緊急対策も補正予算も今回だけで済むはずはない。国民の命と暮らしをどう守るか。政府も国会も、その真価を問われる局面である。

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