30年近く続く小野不由美さんのファンタジー小説「十二国記」…

 30年近く続く小野不由美さんのファンタジー小説「十二国記」。そこでは天意を受けた王が国を治め、人の姿の神獣・麒麟(きりん)が補佐する異世界の物語だ

▼昨年、刊行された新作に「はんこ」を巡るくだりがあった。王の御璽には不思議な力があり、王が死んだり、他者が無断で使おうとしたりすると、印影が消えてしまうのだ

▼はんこの起源は古代メソポタミアにさかのぼり、神聖性や権力を象徴するものだったとされる。福岡市で出土したと伝わる「漢委奴国王印(金印)」もその一つか。超大国に朝貢した見返りにもらったお墨付きは、周辺の勢力を従えるのに効果があったのだろう

▼社会や経済の発展とともに、はんこは契約や決裁に欠かせぬものとなって現代につながる。とりわけ、日本は世界有数のはんこ社会といわれる。それを実感したのが、新型コロナの感染防止のために奨励されている在宅勤務だ

▼ITを使って自宅で仕事はできても、書類への押印から逃れられない人は少なくない。はんこを押すためだけに出社するという話も。それが在宅勤務の障害になっている

▼今はオンライン決裁システムもある。印影は消えず、悪用されにくい不思議な電子印鑑だ。ただし、役所に出す書類や正式な契約書などが押印不要にならなければ、はんこ社会はなくなるまい。いまいましいコロナ禍だが、働き方改革を大きく進める好機と考えることもできよう。

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