手押し車の高齢女性が、歩道の端をゆっくりと歩いている…

 手押し車の高齢女性が、歩道の端をゆっくりと歩いている。朝の通勤を急ぐ人々が通り過ぎる中、そこだけは時の流れが緩やかだ。小さな背中は数歩歩くと立ち止まり、ゆっくりと腰をかがめると、落ちていた紙くずを拾い、手押し車にぶら下げていたポリ袋に入れた。そして再び手押し車の持ち手を握ると、ゆっくりと歩きだした。

 声を掛けてみると「これが毎朝の日課なんですよ」と答えてくれた。80歳を目前に歩行がおぼつかなくなり、散歩を始めたが、ただ歩くだけではなかなか毎日は続かない。何か目的があれば、とごみ拾いも始めたのだという。「それに、皆さんのお役にも立てるでしょ」

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、参加していたサークルは休止中で、家にこもりきりだそうだ。「体力が落ちないように、体を動かさないとね」。自らを奮い立たせて生きる姿を、しばし見守った。 (山本孝子)

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