「介護崩壊」に現実味 集団感染で人手不足…社長が下した“決断”

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 4月初旬、系列のデイサービス事業所が介在する形で新型コロナウイルスの感染者集団が発生した福岡市東区など計3カ所の住宅型有料老人ホーム。いずれの施設もグループとして経営する「ヒーリングフルサービス株式会社」社長の原忠興さん(34)が西日本新聞社の取材に応じた。併設の訪問介護事業所も一時閉鎖を余儀なくされ、人手不足が深刻に。「入居者の暮らしを最低限維持するのが精いっぱい。職員の負担も限界だった」という。適正な介護サービスと感染拡大防止の両立をどう図るのか。現場の苦悩は深い。

 胸ポケットに体温計を入れ、時に一睡もせず部屋を回った。何度も自身の脇に挟んだ。「自分の体より(社長も感染し不在になることで)施設が立ちゆかなくなることが怖かった。入居者も職員も路頭に迷わせられない、その一心だった」。原さんは振り返った。

 ▼一律の休業に疑問

 最初に感染が発覚したのは1日。3ホームの一つ「あいくらす香椎参道」(同市東区)の入居者で、5日前に発熱し、前日から検査を受けていた70代の女性だった。「せきも肺の雑音もなく、訪問診療の主治医から(基礎疾患の)腎盂(じんう)炎が原因だろうと言われていたので驚いた」(原さん)

 グループ内のデイと訪問介護も利用していたことから、市は同社に対し、両事業所の「おおむね2週間程度」の休業を要請する。「一度に多くが集まるデイの休業は仕方ない」と受け入れた原さんだが、訪問介護の事業所全体の休業は「想定外」だった。

 朝夕の投薬や定期的なオムツ替え、洗濯、部屋の清掃…。中には認知症や要介護度の重い人も少なくない。日中の世話は訪問介護のヘルパーの役目。事業所を閉じれば事実上「生活ができなくなる」からだ。

 入居者はすべて個室の単身者ばかりで“隔離”された状態。それぞれ担当のヘルパーは介護記録に残る。「発症前も含め濃厚接触の疑いがあるヘルパーだけを休ませれば、それ以外は働けるはずでは」…。原さんが提案した「現実的な対応」も認められなかった。

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