相次ぐ祭り中止 「伝統」を語り合う機会に

西日本新聞 オピニオン面

 過去に例のない大型連休となった。物足りなさや寂しさを感じている人も少なくなかろう。

 毎年この時季、全国一の人出でにぎわう福岡市の博多どんたく港まつりや、例年100万人が訪れるという佐賀県の有田陶器市など各地の行事・イベントが中止や延期となった。言うまでもなく、新型コロナウイルス対策で全国的に外出、移動の自粛が求められているためだ。

 大型連休だけではない。7月の博多祇園山笠(福岡市)、10月の長崎くんち(長崎市)奉納踊りなど各地伝統の祭りも、準備期間に入る前に主催者が相次いで今年の見送りを決めた。

 こうした伝統行事は地元住民に加え多くの行楽客も訪れる。現状では、新型コロナの感染拡大を防ぐために密集、密閉、密接の「3密」を避けなければならない。「命と健康を守る」ことを最優先に考えれば、やむを得ない各地元の判断だろう。

 とはいえ、長年行事を支えてきた関係者にとっては無念この上ない決断に違いない。地域の伝統行事は住民の暮らしや誇りとともにある。

 例えば、国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産でもある博多祇園山笠は、地元小学校で子供山笠も行い、地域の風景として定着している。6月に入ると地区ごとに住民らが集い、クライマックスの7月15日に向けて結束する。今や運営に欠かせなくなった地域外の人々も引き付ける。博多のイメージを形づくる要素と言える。

 忘れてならないのは、こうした伝統行事は重要な観光資源の顔も持ち、地域経済に大きく貢献していることだ。中止・延期となったことで宿泊、飲食、物産、交通など関係する多様な業界が大きな痛手を受けるのは避けられないだろう。

 そうした業界には零細企業や個人事業主も多い。伝統行事を継続し、来年以降に着実に復活させるには、地元に根付く担い手たちを支えていくことが欠かせない。コロナ禍の地域経済対策は伝統行事の維持ともつながりを持つ。国の施策を踏まえ、独自の補償や融資などの支援策を打ち出した自治体もある。一日も早く実施してほしい。

 伝統行事の存在は都市化の進む現代にあって、地域コミュニティーの維持や住民間の絆を育む面があり、子どもたちに限らず地域づくりの人材を育成する意味も大きい。

 異例の事態を余儀なくされた今年だけに、改めて伝統の価値を各地域で確認したい。未来に引き継ぐためにも、各地の祭りの意義や魅力について世代を超え語り合ってはどうだろう。そうして迎えた来年の祭りは一段と盛り上がるのではないか。

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