対コロナ支援の前線で 吉田賢治

西日本新聞 オピニオン面 吉田 賢治

 知恵比べという生半可な様相ではない。新型コロナウイルスの影響が医療、福祉、経済、教育と社会全般に及ぶ中、全国の自治体職員は今、アイデア、スピード、発信といった総合力を競っている。

 相次いで発表される独自支援策の話だ。それぞれの財政力の範囲内という足かせはある。「隣の自治体より手薄だ」などと批判もされる。それでもやらない選択肢はない。

 経済対策に忙殺されている自治体のある幹部職員から聞いた話を紹介したい。

 感染者の増加はないものの、経営難に陥る事業者の悲痛な声を直接耳にすることが、4月は急激に増えた。通常なら政府の対策が固まってから具体的な対応策を練るが、それでは間に合わない。担当の職員が総出で支援策のアイデアを出し合った。しかしネックになるのはやはり、お金をどう捻出するかだ。

 政策の逐次投入はあっても、政府の支援は具体策がなかなか煮詰まらない。閣僚の記者会見に耳を澄まして「ここまで言ったので、この交付金は使えるのでは」と分析したり、中央省庁に直接電話して情勢を探ったり。「決断しないと遅れるばかり。後は何とかなるとの思いで走りだすしかない」。残業の日々を経て、ようやく独自策の公表にこぎ着けた。もちろん最終判断は、責任者である首長だ。

 こうして練られた結果が、各自治体の独自策となる。地域振興も兼ねて地元のみで使える商品券や地元産コメの支給といったアイデアもあれば、国の事業者向け「持続化給付金」への一律10万円加算、失業者の臨時職員採用といった例もある。

 自治体職員の仕事は終わらない。独自策を執行するには議会に認めてもらう必要がある。さらに、早急に支給するにはどんな方法がいいか、3密を避けるための窓口をどう作るか、職員が感染した場合の対応策はどうするか、長期化に備え第2弾の支援策は…。先の見えない闘いは続く。

 国民のために働く地方公務員だから、命と生活を守るのは当然の仕事だという声もあるだろう。ただ、コロナ後の経済対策を自慢げにぶち上げ、緊急事態を宣言しながら出し惜しみも垣間見える政府の姿を日々見せられると、現場に近い地方の頑張りがセーフティーネットの最後のとりでだ、との思いを強くする。

 授業が始まらず、巣ごもり中の大学生とやりとりする機会があった。コロナ対策を話題にすると彼がぽろりと言った。「権限も財源も地方に移す地方分権を、やはりもっと進めないと」。思わず膝を打った。 (大牟田支局長)

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