「春を告げる町」 福島・広野町の高校演劇部員が問う「復興って何」

西日本新聞 吉田 昭一郎

つなげミニシアターの灯 「仮設の映画館」上映作紹介

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う営業自粛要請で映画館の休館が相次ぐ中、インターネット上で新作映画を有料で鑑賞できる「仮設の映画館」が“開館”している。巣ごもりの日々、すてきな作品に涙したり、社会派作品を見てものを考えたりして過ごしてはどうだろう。配信作品のいくつかを紹介する。

前向きで明るいほど、揺さぶられる

 ドキュメンタリー映画「春を告げる町」(島田隆一監督)は、福島第1原発事故による全町避難を経験した福島県広野町の人たちの今を伝える。興味深いのは、事故後に同町に新設された県立高校の演劇部の作品づくりを絡めて、本当の復興とは何か、掘り下げているところだ。

 登場するのは、町に戻って暮らすことを選んだ人たちだ。震災後に生まれ元気に成長する子どもたちとその両親、稲作再開農家、仮設暮らしを懐かしむ高齢者のほか、今や人口の半数を占めるという廃炉の下請け業者と作業員も登場する。原発がある双葉町からの避難先で暮らす演劇部員もいる。いろいろあるだろうに、人々は前向きだ。前向きで明るいほど、心が揺さぶられる。

 「復興五輪」と称する東京五輪の聖火リレーの出発地とされた町にあって、人々は、そんな華やかさとは対照的に、地に足をつけて、営々と日々を刻む。町が絆再生へ向けて地域に再開を呼び掛ける祭りがあるが、町に若者が戻らず、実現が困難という現実もある。

「春を告げる町」より 舞台稽古に励む高校演劇部員たちⓒJyaJya Films

 

「心のように目に見えないものをどうやって見たら」

 映画が町民たちによる交響楽の舞台で、それぞれが奏でる生き方が主旋律だとすれば、演劇部員たちはバックコーラスだと言えるかもしれない。ところが、このバックコーラスが魅力的なのだ。

 主題は震災になる。自分たちが感じ考えていることをどう舞台で表現するか、つくった台本をはさんで本音を語り合う。ほとんどは震災体験者だが、「考えたことない」と引く子もいる。震災はもう人ごとのように思う向きもある。きれいごとではつまらない。

 時に議論が立ち往生する中、震災当時は海外在住で、ただ一人震災経験がない部員の「震災を学んで情報発信したい」という思いが議論を回し、一つの対話劇に結びついていくのだ。

 けいこを重ねる。

 「経験してないのに簡単に言わないでほしくない?」

 「それ、分かる」

 「でも、経験だけが大事なの? そこから何を考えるか、じゃないの」

 復興とは何か。

 「震災前以上に人が増え活気がある町に…」

 「そんな簡単なことじゃないと思います」

 「被災した町が元に戻ること…」

 「元には戻らないかもしれません」

 「過去を振り切って突き進むしかないと思います」

 「過去を完全に振り切るのは難しいようです」

 「被災した方々が心も含めて取り戻すことだと思います」

 「心のように目に見えないものをどうやって見たらいいですか」

 対話は続く。なかなか答えは見つからない。部員たちのせりふの数々は、復興の在り方を模索する福島の今を鮮やかに映し出しているように思えてくる。

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