ネットで「遠隔記者会見」企業で広がる 不祥事公表は場違いの声も

西日本新聞 吉田 修平 中野 雄策

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業がインターネット上で記者会見を開く動きが広がっている。感染拡大を防ぐための「臨時的な対応」だが、参加する記者を集めやすく効率的に情報発信できる利点が実感されつつあり、企業の広報活動がこれを機に様変わりする可能性がある。専門家からは「不祥事や重要情報の公表にネット上での会見はそぐわない」との指摘もあり、各社の姿勢が問われそうだ。

 「すっきりした味わいで次の1杯も楽しめる。焼き鳥との相性も良いですよ」。4月22日午後、キリンホールディングスグループのメルシャン(東京)が設けたスパークリングワインの新商品発表会。インターネット電話「スカイプ・フォー・ビジネス」を活用した初めての「遠隔記者会見」となった。

 同グループは東京など7都府県に緊急事態宣言が発令された4月7日以降、予定していた会見を全て取りやめていたが、この日は報道関係者約60人が思い思いの場所から参加。約1時間にわたり、担当者が画面越しにお勧めの飲み方などを紹介し、記者の質問にも画面上のメッセージや音声のやりとりで応じた。

 参加者には事前に試飲用の商品を届け、ネット上では伝えられない味のアピールにも余念がなかった。広報担当者は「商品発表会としては、会場を設ける従来型より参加する記者が多かった」と手応えを語る。

 ネット上での商品発表会にはローソンなども3月以降、取り組んでいる。感染拡大が続く中、企業の広報担当者は多くが在宅勤務に切り替わっており、従来のような対面型の情報発信は難しいのが実情だ。

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 大型連休明けに本格化する上場企業の2020年3月期決算の記者会見も、変容を迫られている。これまで多くの企業が決算資料の開示に合わせて本社などで記者会見を開いてきたが、ネット中継や電話会議システムに切り替える動きが相次いでいる。

 トヨタ自動車は12日の決算会見をオンラインで開催予定。計1時間半の二部構成で、後半は豊田章男社長がスピーチし質疑に応じる。日本製鉄は、橋本英二社長による電話会議形式の決算会見を8日に開くとしており「感染拡大防止のため会見の方法は変えるが、決算の中身はしっかり伝えたい」(広報)という。

 感染拡大に伴う経済活動が停滞で企業業績への注目が高まる中、経営陣自らが経営状況を語る記者会見は社会的にも重要だ。東京証券取引所内で会見を開いていた企業も今年は開催が難しいため、経営陣による説明動画をネット上にアップする動きが出ている。

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 九州などの地方企業でも、ネットを活用した広報活動が改めて模索されている。西日本鉄道(福岡市)は、社長の定例記者会見などをオンライン配信できないか検討中。ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)も決算会見をウェブ上で開くという。

 こうした変化について、東京経済大の駒橋恵子教授(広報論)は「『緊急事態』が長期化すれば(ネット会見が)定着するのではないか」と展望。その上で不祥事の公表については「画面越しでは記者が十分に追及できない。(企業が)謝罪文を読み上げておざなりな質問に応じて終わり、ということにもなりかねない」と指摘する。

 発表案件の重要性を踏まえた企業側の対応が、これまで以上に問われることになりそうだ。(吉田修平、中野雄策)

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