西鉄バス乗っ取り20年 見えぬ元少年の社会復帰後、被害者の思い複雑

西日本新聞 野村 有希

 2000年5月、当時17歳の加害男性が大型の包丁を持って西鉄高速バスを乗っ取り、乗客5人を殺傷した事件は3日で発生から20年を迎える。男性は医療少年院を退院後に社会復帰したとされるが、被害者や当時の関係者は、近況や心境を知るすべがない。男性は更生したのか、どんな思いで暮らしているのか-。それぞれの心の中で、事件はまだ終わっていない。

 「ジュディ・アンド・マリーのユキが好きですね」。はにかんだ表情を浮かべ、男性は人気バンドの女性ボーカルの名前を挙げた。男性の付添人団(弁護団)の一人だった弁護士(56)が鑑別所で接見した際、「どういう女の子がタイプ?」と尋ねた時のことだ。

 細身で眼鏡を掛けた男性に、付添人団の弁護士がほぼ毎日接見。心の奥底を探るため、たわいない会話を繰り返した。男性はぽつりと本音を漏らすようになった。「高校に入ってから勉強が厳しくなった」「他校の生徒は威張っている」

 司法試験で不合格が続いた弁護士自身の打ち明け話に興味を持ったのか、「先生はなんで弁護士になったの?」と聞いてくる場面もあった。

 男性にはプライドが高い一面も見られたが、「この子も普通の高校生なんだ」と実感したという。更生の余地があり医療的ケアが必要だと感じた付添人団は、刑事処分相当と判断される「検察逆送致」ではなく、医療少年院に送致する「保護処分」の審判が下るよう尽力した。 事件から約5カ月後、佐賀家裁は保護処分の決定を言い渡す。付添人団の団長を務め、多くの少年事件を手掛けた広島県の弁護士(79)は「医療による更生の機会が与えられたのは良かった」と振り返る。「刑事罰が科され、医療少年院で更生プログラムを受けられなければ、出所後に再び事件を起こしたかもしれない」と思ったからだ。 医療少年院での面会を希望したが、断られた。その後は男性に会えないまま。「今どこで何をしているのか。本当に更生してくれたのか…」。現状を知る手だてはない。

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